日本通運事件・雇用当初から付されていた5年を超えないとの更新上限条項の効力
無期転換逃れ地位確認請求事件
【事件番号】 横浜地方裁判所川崎支部判決/平成30年(ワ)第563号
【判決日付】 令和3年3月30日
【判示事項】 1 労契法19条2号の要件に該当するか否かは,当該雇用の臨時性・常用性,更新の回数,雇用の通算期間,契約期間管理の状況,雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無等の客観的事実を総合考慮して判断すべきであるとされた例
2 労契法19条2号の「満了時」は,最初の有期雇用契約の締結時から雇止めされた雇用契約の満了時までの間のすべての事情が総合的に勘案されることを示すものとされた例
3 本件では,原告Xに,本件雇用契約締結から雇用期間満了までの間に,更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認めがたいとされた例
4 本件雇用契約締結時に,不更新条項等が無期転換申込権の事前放棄の効果を生ずることについて説明されず,また,相当の熟慮期間が設けられなかったこと等の事情は,労働者が契約するかどうかの自由意思を阻害するものであり,当該条項を雇用継続に対する合理的期待の判断において考慮すべきではないとのXの主張が退けられた例
5 本件不更新条項等は労契法18条の適用を免れる目的で設けられたものであり,公序良俗に反し無効であるとのXの主張が退けられた例
6 労契法18条の適用について派遣期間を通算すべきであるとしたXの主張が退けられた例
7 本件雇用契約は,雇用期間満了日の経過をもって終了したものと認めるのが相当であるとされ,雇用契約上従業員としての地位確認ならびに未払賃金および遅延損害金の支払請求が退けられた例
【参照条文】 労契法18
労契法19
【掲載誌】 判例時報2501号93頁
労働判例1255号76頁
労働契約法
(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。