控訴人の応答状況等の諸般の事情を考慮すると,控訴人は最終的には利害得失につき自分なりに判断して退 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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控訴人の応答状況等の諸般の事情を考慮すると,控訴人は最終的には利害得失につき自分なりに判断して退職の意思を固め,本件退職届を作成・提出したものであるとして,控訴人による,強迫を原因とする合意解約申込みの取消しの主張ないし合意解約申込みの意思表示の法律行為の要素の錯誤による無効の主張が,認められなかった例

 

 

労働契約上の地位確認等請求控訴事件

【事件番号】      東京高等裁判所判決/平成13年(ネ)第2115号

【判決日付】      平成13年9月12日

【判示事項】      1 被控訴人会社の各工場長には,当該工場勤務の労働者からの退職願を受理・承認して労働契約合意解約の申込みに対する承諾の意思表示をする権限があると認められ,控訴人と会社の労働契約は,控訴人が会社に対して退職願を提出して合意解約申込みの意思表示をし,同日,工場長が退職通知書を控訴人に交付してこれを承諾する意思表示をした時点で,合意解約により終了したとされた例

             2 工場長らは,控訴人に対し,会社本社において約6年半前の工場での管理職に対する暴行傷害事件につき懲戒処分が検討されている旨告げたにとどまり,懲戒解雇が決定(内定)した旨述べたわけではないから,それが自己都合退職を促す意図であったとしても,工場長らの発言を控訴人に対する違法な害悪の告知とまで評価するのは困難であるとされた例

             3 控訴人の応答状況等の諸般の事情を考慮すると,控訴人は最終的には利害得失につき自分なりに判断して退職の意思を固め,本件退職届を作成・提出したものであるとして,控訴人による,強迫を原因とする合意解約申込みの取消しの主張ないし合意解約申込みの意思表示の法律行為の要素の錯誤による無効の主張が,認められなかった例

             4 平成5年10月の暴行事件につき会社が控訴人の処分をいたずらに長期間放置していたとはいえないこと,控訴人の行為は企業内秩序を乱す行為として懲戒処分の対象になりうると解されることを考慮すると,会社が平成12年5月の時点で控訴人に対する懲戒処分を検討したことが不当とはいえず,工場長らの懲戒処分を検討している旨の発言は信義則違反・権利濫用に当たらないとされた例

【掲載誌】        労働判例817号46頁

             労働経済判例速報1781号16頁

 

 

民法

(詐欺又は強迫)

第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)

第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。