国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条

 

 

国家公務員法違反被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/昭和44年(あ)第1501号

【判決日付】      昭和49年11月6日

【判示事項】      1、国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条

             2、国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法31条

             3、国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法21条

             4、国家公務員法102条における人事院規則への委任の合憲性

             5、国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号の禁止に違反する文書の掲示又は配布に同法110条第1項19号の罰則を適用することが憲法21条、31条に違反しないとされた事例

【判決要旨】      1、国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止は憲法21条に違反しない。

             2、国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法31条に違反しない。

             3、国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法21条に違反しない。

             4、国家公務員法102条における人事院規則への委任は、同法82条による懲戒処分及び同法110条1項19号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に人事院規則に委任しているからといって、憲法の許容する委任の限度を超えるものではない。

             5、国家公務員法102条1項、人事院規則14-7・5項3号、6項13号の禁止に違反する本件文書の掲示又は配布(判文参照)に同法110条第1項19号の罰則を適用することは、たとえその掲示又は配布が、非管理職である現業公務員であって、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより、勤務時間外に国の施設を利用することなく、職務を利用せず又はその公正を害する意図もなく、かつ、労働組合活動の一環として行われた場合であっても、憲法21条、31条に違反しない。

             (4につき反対意見がある。)

【参照条文】      国家公務員法102-1

             人事院規則14-7

             人事院規則14-6

             人事院規則14-5

             憲法21

             国家公務員法110-1

             憲法31

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集28巻9号393頁

 

 

 

国家公務員法

(政治的行為の制限)

第百二条 職員は、政党又は政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法を以てするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除く外、人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。

② 職員は、公選による公職の候補者となることができない。

③ 職員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問、その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。

 

第百十一条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の禁錮又は百万円以下の罰金に処する。

一 何人たるを問わず第九十八条第二項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、唆し、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者

二 第百二条第一項に規定する政治的行為の制限に違反した者

 

 

人事院規則

人事院規則一四―七(政治的行為)

人事院は、国家公務員法に基き、政治的行為に関し次の人事院規則を制定する。

(適用の範囲)

1 法及び規則中政治的行為の禁止又は制限に関する規定は、臨時的任用として勤務する者、条件付任用期間の者、休暇、休職又は停職中の者及びその他理由のいかんを問わず一時的に勤務しない者をも含むすべての一般職に属する職員に適用する。ただし、顧問、参与、委員その他人事院の指定するこれらと同様な諮問的な非常勤の職員(法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)が他の法令に規定する禁止又は制限に触れることなしにする行為には適用しない。

2 法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、すべて、職員が、公然又は内密に、職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止又は制限される。

3 法又は規則によつて職員が自ら行うことを禁止又は制限される政治的行為は、すべて、職員が自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止又は制限される。

4 法又は規則によつて禁止又は制限される職員の政治的行為は、第六項第十六号に定めるものを除いては、職員が勤務時間外において行う場合においても、適用される。

(政治的目的の定義)

5 法及び規則中政治的目的とは、次に掲げるものをいう。政治的目的をもつてなされる行為であつても、第六項に定める政治的行為に含まれない限り、法第百二条第一項の規定に違反するものではない。

一 規則一四―五に定める公選による公職の選挙において、特定の候補者を支持し又はこれに反対すること。

二 最高裁判所の裁判官の任命に関する国民審査に際し、特定の裁判官を支持し又はこれに反対すること。

三 特定の政党その他の政治的団体を支持し又はこれに反対すること。

四 特定の内閣を支持し又はこれに反対すること。

五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し又はこれに反対すること。

六 国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。

七 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)に基く地方公共団体の条例の制定若しくは改廃又は事務監査の請求に関する署名を成立させ又は成立させないこと。

八 地方自治法に基く地方公共団体の議会の解散又は法律に基く公務員の解職の請求に関する署名を成立させ若しくは成立させず又はこれらの請求に基く解散若しくは解職に賛成し若しくは反対すること。

(政治的行為の定義)

6 法第百二条第一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう。

一 政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。

二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し又は提供せずその他政治的目的をもつなんらかの行為をなし又はなさないことに対する代償又は報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て又は得させようとすることあるいは不利益を与え、与えようと企て又は与えようとおびやかすこと。

三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費又はその他の金品を求め若しくは受領し又はなんらの方法をもつてするを問わずこれらの行為に関与すること。

四 政治的目的をもつて、前号に定める金品を国家公務員に与え又は支払うこと。

五 政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し若しくはこれらの行為を援助し又はそれらの団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となること。

六 特定の政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないように勧誘運動をすること。

七 政党その他の政治的団体の機関紙たる新聞その他の刊行物を発行し、編集し、配布し又はこれらの行為を援助すること。

八 政治的目的をもつて、第五項第一号に定める選挙、同項第二号に定める国民審査の投票又は同項第八号に定める解散若しくは解職の投票において、投票するように又はしないように勧誘運動をすること。

九 政治的目的のために署名運動を企画し、主宰し又は指導しその他これに積極的に参与すること。

十 政治的目的をもつて、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること。

十一 集会その他多数の人に接し得る場所で又は拡声器、ラジオその他の手段を利用して、公に政治的目的を有する意見を述べること。

十二 政治的目的を有する文書又は図画を国又は行政執行法人の庁舎(行政執行法人にあつては、事務所。以下同じ。)、施設等に掲示し又は掲示させその他政治的目的のために国又は行政執行法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し又は利用させること。

十三 政治的目的を有する署名又は無署名の文書、図画、音盤又は形象を発行し、回覧に供し、掲示し若しくは配布し又は多数の人に対して朗読し若しくは聴取させ、あるいはこれらの用に供するために著作し又は編集すること。

十四 政治的目的を有する演劇を演出し若しくは主宰し又はこれらの行為を援助すること。

十五 政治的目的をもつて、政治上の主義主張又は政党その他の政治的団体の表示に用いられる旗、腕章、記章、えり章、服飾その他これらに類するものを製作し又は配布すること。

十六 政治的目的をもつて、勤務時間中において、前号に掲げるものを着用し又は表示すること。

十七 なんらの名義又は形式をもつてするを問わず、前各号の禁止又は制限を免れる行為をすること。

7 この規則のいかなる規定も、職員が本来の職務を遂行するため当然行うべき行為を禁止又は制限するものではない。

8 各省各庁の長及び行政執行法人の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があつたことを知つたときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。

 

 

憲法

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

 

第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。