検察官のした接見等の指定の措置が指定の方法等において著しく合理性を欠き違法なものとされた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/昭和58年(オ)第379号、昭和58年(オ)第381号
【判決日付】 平成3年5月10日
【判示事項】 一、刑訴法三九条三項の規定にいう「捜査のための必要があるとき」に当たる場合
二、捜査機関の接見の日時等の指定の方法と裁量の範囲
三、検察官のした接見等の指定の措置が指定の方法等において著しく合理性を欠き違法なものとされた事例
【判決要旨】 一、刑訴法三九条三項の規定にいう「捜査のため必要があるとき」には、捜査機関が弁護人から被疑者との接見の申出を受けた時に、間近い時に被疑者を取り調べたり、実況見分、検証等に立ち合わせたりするなどの確実な予定があって、弁護人の必要とする接見を認めたのでは右取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合が含まれる。
二、捜査機関が弁護人と被疑者との接見の日時等を指定する方法は、その合理的裁量にゆだねられているが、それが著しく合理性を欠き、弁護人と被疑者との迅速かつ円滑な接見交通が害される結果になるようなときは、違法なものとして許されない。
三、検察官が、弁護人から被疑者との接見等の申出を受けた警察官から電話によりその措置について指示を求められた際に、弁護人と協議する姿勢を示すことなく、一方的に往復約二時間を要するほど離れている勤務庁に接見指定書を取りに来させてほしい旨を伝言したのみで接見の日時等を指定しようとせず、かつ、被疑者に対する物の授受につき裁判所の接見禁止決定の解除決定を得ない限り認められないとした措置は、その指定の方法等において著しく合理性を欠き、違法である。(一につき補足意見がある。)
【参照条文】 国家賠償法1-1
刑事訴訟法39-1
刑事訴訟法39-3
憲法34
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集45巻5号919頁
国家賠償法
第一条1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
憲法
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
刑事訴訟法
第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
② 前項の接見又は授受については、法令(裁判所の規則を含む。以下同じ。)で、被告人又は被疑者の逃亡、罪証の隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防ぐため必要な措置を規定することができる。
③ 検察官、検察事務官又は司法警察職員(司法警察員及び司法巡査をいう。以下同じ。)は、捜査のため必要があるときは、公訴の提起前に限り、第一項の接見又は授受に関し、その日時、場所及び時間を指定することができる。但し、その指定は、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限するようなものであつてはならない。