暗号資産の利用契約を締結した者が、ビットコインアドレスから暗号資産取引仲介業者のビットコイン受領用アドレスに対し、業務対象通貨に属さない暗号資産テザーを送信した場合において、テザーの返還請求が認められないとされた事例
寄託物返還等請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成30年(ワ)第26713号
【判決日付】 令和2年7月31日
【判示事項】 暗号資産の利用契約を締結した者が、ビットコインアドレスから暗号資産取引仲介業者のビットコイン受領用アドレスに対し、業務対象通貨に属さない暗号資産テザーを送信した場合において、テザーの返還請求が認められないとされた事例
【判決要旨】 暗号資産の利用契約を締結した者が、ビットコインアドレスから暗号資産取引仲介業者のビットコイン受領用アドレスに対し、暗号資産テザーを送信した場合において、①テザーが上記契約の業務対象通貨に含まれないこと、②業者がこれをテザーとして入出金処理するシステムを具備していないため、システム改修を行わない限りテザーとして入出金することはできないこと、③上記送信の処理もビットコインの送金として処理されていたことなど判示の事実関係の下においては、上記送信によって上記テザーに係る準寄託契約が成立したと認めることはできず、同契約に基づくテザーの返還請求および事務管理または不当利得による返還請求は、認められない。
【参照条文】 資金決済に関する法律2-5
資金決済に関する法律63の11
民法415
民法657
民法662
民法697
民法703
民法709
【掲載誌】 金融・商事判例1605号40頁
資金決済に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「前払式支払手段発行者」とは、第三条第六項に規定する自家型発行者及び同条第七項に規定する第三者型発行者をいう。
2 この法律において「資金移動業」とは、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことをいう。
3 この法律において「資金移動業者」とは、第三十七条の登録を受けた者をいう。
4 この法律において「外国資金移動業者」とは、この法律に相当する外国の法令の規定により当該外国において第三十七条の登録と同種類の登録(当該登録に類する許可その他の行政処分を含む。)を受けて為替取引を業として営む者をいう。
5 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
(利用者財産の管理)
第六十三条の十一 暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関して、暗号資産交換業の利用者の金銭を、自己の金銭と分別して管理し、内閣府令で定めるところにより、信託会社等に信託しなければならない。
2 暗号資産交換業者は、その行う暗号資産交換業に関して、内閣府令で定めるところにより、暗号資産交換業の利用者の暗号資産を自己の暗号資産と分別して管理しなければならない。この場合において、当該暗号資産交換業者は、利用者の暗号資産(利用者の利便の確保及び暗号資産交換業の円滑な遂行を図るために必要なものとして内閣府令で定める要件に該当するものを除く。)を利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定める方法で管理しなければならない。
3 暗号資産交換業者は、前二項の規定による管理の状況について、内閣府令で定めるところにより、定期に、公認会計士(公認会計士法第十六条の二第五項に規定する外国公認会計士を含む。第六十三条の十四第三項において同じ。)又は監査法人の監査を受けなければならない。
民法
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
(寄託)
第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(寄託者による返還請求等)
第六百六十二条 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。
2 前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
(事務管理)
第六百九十七条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
2 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。