Xが執務時間中にわいせつな情報等に接していたという事実は,Xの取締役としての資質に疑義を生じさせ | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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Xが執務時間中にわいせつな情報等に接していたという事実は,Xの取締役としての資質に疑義を生じさせるものといえ、Xの取締役解任については,「正当な理由」(会社法339条2項)があるとされた例

 

 

              解雇無効確認等請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/平成29年(ワ)第5300号

【判決日付】      令和2年1月24日

【判示事項】      1 被告Y社は,原告Xの取締役就任時と,その後の取締役会において,Xに対して使用人職務を委嘱する旨の取締役会決議をし,引き続き製造部長との役職名を付与しており,そのことは使用人としての役職名を付与したという外形のみにとどまらず,取締役会決議というY社内部での意思決定の下,Xに使用人としての地位を兼ねさせていたとの評価が妥当しうるとされた例

             2 Xについて,平成27年6月1日,Y社から常務取締役の役職名を付与されてからは,①製造部長等といった使用人の地位を示す役職名が付与されないようになったこと,②関与する職務内容の中に,従業員としての地位の保有とは明らかに矛盾抵触するというべきものが見受けられるようになったこと,③乙山社長や乙山専務との報酬額の差が小さくなっていることからすると,常務取締役就任時に,本件雇用契約を終了させる旨の黙示的な合意が成立したものと認定することが相当であるとされた例

             3 製造部長としてのXについても,いわゆる管理監督者(労基法41条2号参照)に該当するというべきであるとして,Xの割増賃金請求が棄却された例

             4 Xが執務時間中にわいせつな情報等に接していたという事実は,Xの取締役としての資質に疑義を生じさせるものといえるとされた例

             5 Xの取締役解任については,「正当な理由」(会社法339条2項)があるとされた例

             6 Xの退職金請求について,取締役就任後の期間を勤続年数に算入して退職金の支払請求(1096万2000円)が認められた例

【掲載誌】        労働判例1226号84頁

             LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      労政時報3997号10頁

 

 

会社法

(株式会社と役員等との関係)

第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

 

(忠実義務)

第三百五十五条 取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。

 

(解任)

第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。