インターネットのウェブサイトにおける書き込みが不法行為に当たる場合につき、書き込みの発信者の調査費用が損害と認められた事例
損害賠償請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成23年(ワ)第5572号
【判決日付】 平成24年1月31日
【判示事項】 インターネットのウェブサイトにおける書き込みが不法行為に当たる場合につき、書き込みの発信者の調査費用が損害と認められた事例
【参照条文】 民法709
民法710
【掲載誌】 判例時報2154号80頁
主 文
一 被告乙山松夫は、原告に対し、一七三万円及びこれに対する平成二二年六月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを三分し、その二を原告の負担とし、その一を被告乙山松夫の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
一 被告らは、原告に対し、連帯して、五〇三万円及びこれに対する平成二二年六月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 仮執行宣言
第二 事案の概要
本件は、原告が、被告乙山松夫(被告乙山)に対し、原告が盗撮したとうかがわせる内容について、インターネットを介して、いわゆる「2ちゃんねる」のウェブサイトに掲載したと主張し、不法行為に基づく損害賠償を求め、併せて、被告乙山が被告丙川株式会社(被告会社)の就業時間中に上記不法行為を行ったものであると主張し、被告会社に対し、使用者責任を求める事案である。
一 原告の主張
(1) 原告は、個人事業主として、システムエンジニアを行い、被告会社との間で、包括的な業務委託契約を締結し、それに基づき、株式会社戊田(戊田社)においてシステム担当として稼働している。
(2) 被告会社は、電気通信機器の販売、工事および保守などを業とする会社であり、被告乙山は、被告会社の従業員である。
(3) 被告乙山は、自己が契約する携帯電話からインターネットを介して、不特定多数の者が閲覧可能な「2ちゃんねる」と題するウェブサイト内の「戊田社総合スレ《略》」と題するスレッドに、別紙投稿記事目録記載の書き込み(本件書込)をした(甲一ないし四)。
原告は、「2ちゃんねる」から、本件書込に関する開示を受けたが、これらの書き込みはいずれも同一のiモードIDの者が書き込んでいる。iモードIDは、ドコモのiモード携帯電話がiモードサイトにアクセスする際にサイトに通知されるID番号であって、ID番号は携帯電話番号一つに対して一つ割り当てられている。他のiモード契約に割り振られたID番号と重複することはないので、同一のiモードIDであることは同一iモード契約がなされている携帯電話からの書き込みがなされたことを意味している。