不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
建物収去土地明渡等本訴請求、土地所有権確認等反訴請求、土地持分移転登記手続等反訴請求事件
【事件番号】 最高裁判所第2小法廷判決/平成9年(オ)第1876号
【判決日付】 平成12年4月7日
【判示事項】 1 不動産の共有者が当該不動産を単独で占有する他の共有者に対し不当利得返還請求ないし損害賠償請求をすることの可否
2 請求の一部についての予備的な請求原因となるべき相続取得の主張を原告がしていなくても裁判所は被相続人の死亡等の事実をしんしゃくすべきであるとされた事例
【判決要旨】 1 不動産の共有者は当該不動産を単独で占有することができる権原がないのにこれを単独で占有している他の共有者に対し、自己の持分割合に応じて占有部分に係る賃料相当額の不当利得金ないし損害賠償金の支払を請求することができる。
2 原告が、夫の父が土地を夫に贈与し夫から右土地を相続取得したと主張して、右土地を占有する被告らに対し地代相当損害金等を請求する訴訟において、裁判所は、当事者の主張に基づいて右父の死亡、夫がその相続人の一人であること等の事実を確定した以上、右死亡により夫が右土地の持分を相続取得したことを原告が主張しなかったとしても、適切に釈明権を行使するなどした上でこれらの事実をしんしゃくし、夫の相続による持分の取得及び原告の相続による当該持分の取得を理由に原告の請求の一部を認容すべきであるかどうかについて審理判断すべきである。
【参照条文】 民法249
民法703
民法709
民事訴訟法246
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事198号1頁
裁判所時報1265号275頁
判例タイムズ1034号98頁
金融・商事判例1104号12頁
判例時報1713号50頁
民法
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
(不当利得の返還義務)
第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
民事訴訟法
(判決事項)
第二百四十六条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。