委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否

 

 

業務上横領被告事件

【事件番号】      最高裁判所大法廷判決/平成13年(あ)第746号

【判決日付】      平成15年4月23日

【判示事項】      一 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了していた場合においてその後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了する行為と横領罪の成否

             二 委託を受けて他人の不動産を占有する者がこれにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときの審理方法

【判決要旨】      一 委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後、これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは、後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ、先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。

             二 委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後、これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了した場合において、後行の所有権移転行為のみが横領罪として起訴されたときは、裁判所は、所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり、犯罪の成否を決するに当たり、所有権移転行為に先立って横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかといった訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきではない。

【参照条文】      刑法(平7法91号改正前)1編7章

             刑法252

             刑法253

             刑事訴訟法256

【掲載誌】        最高裁判所刑事判例集57巻4号467頁

 

 

刑法

(横領)

第二百五十二条 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。

2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

 

 

刑事訴訟法

第二百五十六条 公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。

② 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。

一 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項

二 公訴事実

三 罪名

③ 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。

④ 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。

⑤ 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。

⑥ 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。