科学飼料研究所事件・格差是正損害賠償請求事件 格差是正損害賠償請求事件 神戸地方裁判所 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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科学飼料研究所事件・格差是正損害賠償請求事件

 

 

格差是正損害賠償請求事件

【事件番号】      神戸地方裁判所姫路支部判決/平成29年(ワ)第151号

【判決日付】      令和3年3月22日

【判示事項】      1 被告Y社の一般職コース社員に対する賞与は,労働意欲の向上,人材の確保・定着を図る趣旨によるところ,原告Xら嘱託社員との間の職務内容,職務内容や配置の変更範囲,人材活用の仕組みの各相違,および,再雇用者を除くXら嘱託社員の年間支給額と比較して一般職コース社員の基本給が低い一方,定年後の再雇用者では老齢厚生年金の支給等から賃金が抑制され得ること,さらに,Y社には試験による登用制度があり,嘱託社員としての雇用が固定されたものではないこと等から,一般職コース社員とXら嘱託社員との間の賞与にかかる労働条件の相違は不合理でないとされた例

             2 Y社の家族手当や住宅手当は,支給要件や金額に照らすと従業員の生活費を補助する趣旨であるところ,扶養者がいることで日常の生活費が増加することは,Xら嘱託社員と一般職コース社員の間で変わりはなく,Xら嘱託社員と一般職コース社員は,いずれも転居を伴う異動は予定されず,住居を持つことで住居費を要することになる点でも違いはないから,家族手当および住宅手当の趣旨は,Xら嘱託社員にも同様に妥当するとされ,これらをまったく支給しないことは不合理とされた例

             3 Y社の昼食手当は,当初は従業員の食事にかかる補助の趣旨で支給されていたが,遅くとも平成4年頃までには,名称にかかわらず,月額給与額を調整する趣旨で支給されていたところ,一般職コース社員とXら嘱託社員との間の職務内容,職務内容や配置の変更範囲,人材活用の仕組み等が異なること,両社員では賃金体系が異なり,一般職コース社員の月額の基本給は,昼食手当を加えてもXら嘱託社員の月額支給額より低いこと,Y社では登用制度が設けられていること等から,一般職コース社員とXら嘱託社員との間の昼食手当にかかる労働条件の相違は不合理でないとされた例

             4 無期雇用の原告Xら年俸社員と一般職コース社員の間に本件手当等の支給にかかる労働条件の相違があることについて,労契法20条を類推適用するべき,あるいは,憲法14条,労契法3条2項,同一労働同一賃金の原則等により裏付けられた公序良俗(民法90条)に違反する等の原告Xらの主張がいずれも退けられた例

【掲載誌】        労働判例1242号5頁

 

 

旧労働契約法20条に相当する

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律

(不合理な待遇の禁止)

第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

 

 

憲法

第十四条1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

 

労働契約法

(労働契約の原則)

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

 

労働基準法

(均等待遇)

第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

(男女同一賃金の原則)

第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。