違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
覚醒剤取締法違反,大麻取締法違反,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所第3小法廷判決/令和2年(あ)第1763号
【判決日付】 令和3年7月30日
【判示事項】 違法収集証拠として証拠能力を否定した第1審の訴訟手続に法令違反があるとした原判決に,法令の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
【判決要旨】 警察官が,被告人の自動車内にチャック付きビニール袋を確認した旨の疎明資料を作成して同車に対する捜索差押許可状及び強制採尿令状を請求して上記各令状の発付を受け,同車内から覚醒剤等の薬物を差し押さえ,被告人から尿の任意提出を受けたなどの本件の事実経過(判文参照)の下では,同薬物並びに同薬物及び被告人の尿に関する各鑑定書の証拠能力の判断に当たり,警察官が上記ビニール袋は同車内になかったのに上記疎明資料を作成して上記各令状を請求した事実の存否を確定せず,その存否を前提に上記各証拠の収集手続に重大な違法があるかどうかを判断しないまま,証拠能力が否定されないとした原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411条1号により破棄を免れない。
(補足意見がある。)
【参照条文】 刑事訴訟法1
刑事訴訟法317
刑事訴訟法411
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集75巻7号930頁
刑事訴訟法
第一条 この法律は、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする。
第三百十七条 事実の認定は、証拠による。
第四百十一条 上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由がない場合であつても、左の事由があつて原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
一 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
二 刑の量定が甚しく不当であること。
三 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
四 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
五 判決があつた後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があつたこと。