共有に属する株式につき株主の権利を行使すべき者を指定する行為と民法826条にいう利益相反行為 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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共有に属する株式につき株主の権利を行使すべき者を指定する行為と民法826条にいう利益相反行為

 

 

              異議申述催告公告請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和51年(オ)第419号

【判決日付】      昭和52年11月8日

【判示事項】      1、共有に属する株式につき株主の権利を行使すべき者を指定する行為と民法826条にいう利益相反行為

             2、商法350条1項の株券提出期間経過前に株式を譲り受けたが名義書換を経ていない株主と同条3項の異議催告公告請求権

【判決要旨】      1、株式が未成年の子とその親権者を含む数人の共有に属する場合において、親権者が未成年の子を代理して商法203条2項にいう株主の権利を行使すべき者を指定する行為は、これを親権者自身と指定するときであつても、民法826条にいう利益相反行為にあたらない。

           2、商法350条1項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者は、名義書換を経ていない場合でも、同条3項によつて準用される同法378条の異議催告公告請求権を有し、右譲受により株式が数人の共有に属することとなつた場合には、株主の権利を行使すべき者の指定が株券提出期間経過後にされたときであつても、右指定を受けた者においてこれを請求することができる。

【参照条文】      商法203

             民法826

             商法350

             商法378-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集31巻6号847頁

             最高裁判所裁判集民事122号177頁

             裁判所時報729号1頁

             判例タイムズ357号

 

民法

(利益相反行為)

第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

 

 

会社法

(共有者による権利の行使)

第百六条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

 

(株券の提出に関する公告等)

第二百十九条 株券発行会社は、次の各号に掲げる行為をする場合には、当該行為の効力が生ずる日(第四号の二に掲げる行為をする場合にあっては、第百七十九条の二第一項第五号に規定する取得日。以下この条において「株券提出日」という。)までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の一箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。ただし、当該株式の全部について株券を発行していない場合は、この限りでない。

一 第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、当該事項についての定めを設ける種類の株式)

二 株式の併合 全部の株式(種類株式発行会社にあっては、第百八十条第二項第三号の種類の株式)

三 第百七十一条第一項に規定する全部取得条項付種類株式の取得 当該全部取得条項付種類株式

四 取得条項付株式の取得 当該取得条項付株式

四の二 第百七十九条の三第一項の承認 売渡株式

五 組織変更 全部の株式

六 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 全部の株式

七 株式交換 全部の株式

八 株式移転 全部の株式

2 株券発行会社が次の各号に掲げる行為をする場合において、株券提出日までに当該株券発行会社に対して株券を提出しない者があるときは、当該各号に定める者は、当該株券の提出があるまでの間、当該行為(第二号に掲げる行為をする場合にあっては、株式売渡請求に係る売渡株式の取得)によって当該株券に係る株式の株主が受けることのできる金銭等の交付を拒むことができる。

一 前項第一号から第四号までに掲げる行為 当該株券発行会社

二 第百七十九条の三第一項の承認 特別支配株主

三 組織変更 第七百四十四条第一項第一号に規定する組織変更後持分会社

四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。) 第七百四十九条第一項に規定する吸収合併存続会社又は第七百五十三条第一項に規定する新設合併設立会社

五 株式交換 第七百六十七条に規定する株式交換完全親会社

六 株式移転 第七百七十三条第一項第一号に規定する株式移転設立完全親会社

3 第一項各号に定める株式に係る株券は、株券提出日に無効となる。

4 第一項第四号の二の規定による公告及び通知の費用は、特別支配株主の負担とする。

 

(株券の提出をすることができない場合)

第二百二十条 前条第一項各号に掲げる行為をした場合において、株券を提出することができない者があるときは、株券発行会社は、その者の請求により、利害関係人に対し異議があれば一定の期間内にこれを述べることができる旨を公告することができる。ただし、当該期間は、三箇月を下ることができない。

2 株券発行会社が前項の規定による公告をした場合において、同項の期間内に利害関係人が異議を述べなかったときは、前条第二項各号に定める者は、前項の請求をした者に対し、同条第二項の金銭等を交付することができる。

3 第一項の規定による公告の費用は、同項の請求をした者の負担とする。

 

 

第三款 株券喪失登録

(株券喪失登録簿)

第二百二十一条 株券発行会社(株式会社がその株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした日の翌日から起算して一年を経過していない場合における当該株式会社を含む。以下この款(第二百二十三条、第二百二十七条及び第二百二十八条第二項を除く。)において同じ。)は、株券喪失登録簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下この款において「株券喪失登録簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。

一 第二百二十三条の規定による請求に係る株券(第二百十八条第二項又は第二百十九条第三項の規定により無効となった株券及び株式の発行又は自己株式の処分の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合における当該株式に係る株券を含む。以下この款(第二百二十八条を除く。)において同じ。)の番号

二 前号の株券を喪失した者の氏名又は名称及び住所

三 第一号の株券に係る株式の株主又は登録株式質権者として株主名簿に記載され、又は記録されている者(以下この款において「名義人」という。)の氏名又は名称及び住所

四 第一号の株券につき前三号に掲げる事項を記載し、又は記録した日(以下この款において「株券喪失登録日」という。)

(株券喪失登録簿に関する事務の委託)

第二百二十二条 株券発行会社における第百二十三条の規定の適用については、同条中「株主名簿の」とあるのは「株主名簿及び株券喪失登録簿の」と、「株主名簿に」とあるのは「株主名簿及び株券喪失登録簿に」とする。

(株券喪失登録の請求)

第二百二十三条 株券を喪失した者は、法務省令で定めるところにより、株券発行会社に対し、当該株券についての株券喪失登録簿記載事項を株券喪失登録簿に記載し、又は記録すること(以下「株券喪失登録」という。)を請求することができる。

(名義人等に対する通知)

第二百二十四条 株券発行会社が前条の規定による請求に応じて株券喪失登録をした場合において、当該請求に係る株券を喪失した者として株券喪失登録簿に記載され、又は記録された者(以下この款において「株券喪失登録者」という。)が当該株券に係る株式の名義人でないときは、株券発行会社は、遅滞なく、当該名義人に対し、当該株券について株券喪失登録をした旨並びに第二百二十一条第一号、第二号及び第四号に掲げる事項を通知しなければならない。

2 株式についての権利を行使するために株券が株券発行会社に提出された場合において、当該株券について株券喪失登録がされているときは、株券発行会社は、遅滞なく、当該株券を提出した者に対し、当該株券について株券喪失登録がされている旨を通知しなければならない。

(株券を所持する者による抹消の申請)

第二百二十五条 株券喪失登録がされた株券を所持する者(その株券についての株券喪失登録者を除く。)は、法務省令で定めるところにより、株券発行会社に対し、当該株券喪失登録の抹消を申請することができる。ただし、株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過したときは、この限りでない。

2 前項の規定による申請をしようとする者は、株券発行会社に対し、同項の株券を提出しなければならない。

(後略)

 

 

【出  典】       判例タイムズ357号223頁

 

本件は、株券提出期間経過前に相続があり、相続の場合の特殊性を問題にする必要がない事案であり、本判決もその点には触れていないが、株券提出期間経過後の相続人の異議催告公告請求権を否定する趣旨を含むものではないと思われる。