破産債権者が、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者の占有する破産者の手形の取立又は処 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

破産債権者が、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者の占有する破産者の手形の取立又は処分をしてその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結した上、支払の停止又は破産の申立のあったことを知る前に破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止等の事実を知った後破産宣告前に右手形を取り立てたことにより負担した破産者に対する取立金引渡債務は、破産法一〇四条二号但書にいう「支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタル時ヨリ前ニ生ジタル原因ニ基」づき負担したものに当たる。

 

 

手形金取立金返還等請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和59年(オ)第557号

【判決日付】      昭和63年10月18日

【判示事項】      一、信用金庫の商人性

             二、信用金庫取引約定書四条四項の趣旨

             三、破産債権者が支払停止又は破産申立前にされた取立委任に基づき支払停止又は破産申立のあったことを知ってした手形の取立と破産法一〇四条二号但書

【判決要旨】      一、信用金庫法に基づいて設立された信用金庫は、商法上の商人にはあたらない。

             二、信用金庫取引約定書四条四項は、取引先において信用金庫に対し、取引先がその債務を履行しない場合に、信用金庫の占有する取引先の手形等の取立又は処分をする権限及び取立又は処分によって取得した金員を取引先の債務の弁済に充当する権限を授与する趣旨であり、右手形等につき、取引先の債務不履行を停止条件として譲渡担保権、質権等の担保権を設定する趣旨の規定ではない。

             三、破産債権者が、破産者が債務の履行をしなかったときには破産債権者の占有する破産者の手形の取立又は処分をしてその取得金を債務の弁済に充当することができる旨の条項を含む取引約定を締結した上、支払の停止又は破産の申立のあったことを知る前に破産者から手形の取立を委任されて裏書交付を受け、支払の停止等の事実を知った後破産宣告前に右手形を取り立てたことにより負担した破産者に対する取立金引渡債務は、破産法一〇四条二号但書にいう「支払ノ停止若ハ破産ノ申立アリタルコトヲ知リタル時ヨリ前ニ生ジタル原因ニ基」づき負担したものに当たる。

【参照条文】      商法4-1

             信用金庫法1

             信用金庫法2

             信用金庫法(昭和56年法律第60号による改正前のもの)53

             民法1編4章1節

             破産法104

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集42巻8号575頁

             最高裁判所裁判集民事155号21頁

             裁判所時報991号1頁

             判例タイムズ685号154頁

             金融・商事判例810号3頁

 

 

商法

(定義)

第四条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。

(絶対的商行為)

第五百一条 次に掲げる行為は、商行為とする。

一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為

二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為

三 取引所においてする取引

四 手形その他の商業証券に関する行為

(営業的商行為)

第五百二条 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為

二 他人のためにする製造又は加工に関する行為

三 電気又はガスの供給に関する行為

四 運送に関する行為

五 作業又は労務の請負

六 出版、印刷又は撮影に関する行為

七 客の来集を目的とする場屋における取引

八 両替その他の銀行取引

九 保険

十 寄託の引受け

十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為

十二 商行為の代理の引受け

十三 信託の引受け

(附属的商行為)

第五百三条 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。

2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。

 

 

信用金庫法

(目的)

第一条 この法律は、国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資するため、協同組織による信用金庫の制度を確立し、金融業務の公共性にかんがみ、その監督の適正を期するとともに信用の維持と預金者等の保護に資することを目的とする。

(人格)

第二条 信用金庫及び信用金庫連合会(以下「金庫」と総称する。)は、法人とする。

第五章 事業

(信用金庫の事業)

第五十三条 信用金庫は、次に掲げる業務を行うことができる。

一 預金又は定期積金の受入れ

二 会員に対する資金の貸付け

三 会員のためにする手形の割引

四 為替取引

2 信用金庫は、政令で定めるところにより、前項第二号及び第三号に掲げる業務の遂行を妨げない限度において、地方公共団体、金融機関その他会員以外の者に対して資金の貸付け(手形の割引を含む。以下この章において同じ。)をすることができる。

3 信用金庫は、前二項の規定により行う業務のほか、当該業務に付随する次に掲げる業務その他の業務を行うことができる。

一 債務の保証又は手形の引受け(会員のためにするものその他の内閣府令で定めるものに限る。)

二 有価証券(第五号に規定する証書をもつて表示される金銭債権に該当するもの及び短期社債等を除く。第五号の二及び第六号において同じ。)の売買(有価証券関連デリバティブ取引に該当するものを除く。)又は有価証券関連デリバティブ取引(投資の目的をもつてするもの又は書面取次ぎ行為に限る。)

三 有価証券の貸付け(会員のためにするものその他の内閣府令で定めるものに限る。)

四 国債、地方債若しくは政府保証債(以下この条及び次条において「国債等」という。)の引受け(売出しの目的をもつてするものを除く。)又は当該引受けに係る国債等の募集の取扱い

五 金銭債権(譲渡性預金証書その他の内閣府令で定める証書をもつて表示されるものを含む。)の取得又は譲渡

五の二 特定目的会社が発行する特定社債(特定短期社債を除き、資産流動化計画において当該特定社債の発行により得られる金銭をもつて金銭債権(民法第三編第一章第七節第一款(指図証券)に規定する指図証券、同節第二款(記名式所持人払証券)に規定する記名式所持人払証券、同節第三款(その他の記名証券)に規定するその他の記名証券及び同節第四款(無記名証券)に規定する無記名証券に係る債権並びに電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項(定義)に規定する電子記録債権を除く。以下この号において同じ。)又は金銭債権を信託する信託の受益権のみを取得するものに限る。以下この号において同じ。)その他特定社債に準ずる有価証券として内閣府令で定めるもの(以下この号及び次条第四項第五号の二において「特定社債等」という。)の引受け(売出しの目的をもつてするものを除く。)又は当該引受けに係る特定社債等の募集の取扱い

五の三 短期社債等の取得又は譲渡

六 有価証券の私募の取扱い

七 金庫、株式会社日本政策金融公庫その他内閣総理大臣が定める者(外国の法令に準拠して外国において銀行業(銀行法第二条第二項(定義等)に規定する銀行業をいう。第五十四条の二十三第一項第六号において同じ。)を営む者(同法第四条第五項(営業の免許)に規定する銀行等を除く。以下「外国銀行」という。)を除く。)の業務(次号に掲げる業務に該当するもの及び次条第四項第七号の二に掲げる業務を除く。)の代理又は媒介(内閣総理大臣が定めるものに限る。)

七の二 外国銀行の業務の代理又は媒介(外国において行う外国銀行の業務の代理又は媒介であつて、内閣府令で定めるものに限る。)

八 国、地方公共団体、会社等の金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い

九 有価証券、貴金属その他の物品の保護預り

九の二 振替業

十 両替

十一 デリバティブ取引(有価証券関連デリバティブ取引に該当するものを除く。次号において同じ。)であつて内閣府令で定めるもの(第五号に掲げる業務に該当するものを除く。)

十二 デリバティブ取引(内閣府令で定めるものに限る。)の媒介、取次ぎ又は代理

十三 金利、通貨の価格、商品の価格、算定割当量(地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第二条第七項(定義)に規定する算定割当量その他これに類似するものをいう。以下同じ。)の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引又はこれに類似する取引であつて内閣府令で定めるもの(次号において「金融等デリバティブ取引」という。)のうち信用金庫の経営の健全性を損なうおそれがないと認められる取引として内閣府令で定めるもの(第五号及び第十一号に掲げる業務に該当するものを除く。)

十四 金融等デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理(第十二号に掲げる業務に該当するもの及び内閣府令で定めるものを除く。)

十五 有価証券関連店頭デリバティブ取引(当該有価証券関連店頭デリバティブ取引に係る有価証券が第五号に規定する証書をもつて表示される金銭債権に該当するもの及び短期社債等以外のものである場合には、差金の授受によつて決済されるものに限る。次号において同じ。)(第二号に掲げる業務に該当するものを除く。)

十六 有価証券関連店頭デリバティブ取引の媒介、取次ぎ又は代理

十七 機械類その他の物件を使用させる契約であつて次に掲げる要件の全てを満たすものに基づき、当該物件を使用させる業務(会員又はこれに準ずる者として内閣府令で定めるもののためにするものに限る。)

イ 契約の対象とする物件(以下この号及び次条第四項第十七号において「リース物件」という。)を使用させる期間(以下この号及び同項第十七号において「使用期間」という。)の中途において契約の解除をすることができないものであること又はこれに準ずるものとして内閣府令で定めるものであること。

ロ 使用期間において、リース物件の取得価額から当該リース物件の使用期間の満了の時において譲渡するとした場合に見込まれるその譲渡対価の額に相当する金額を控除した額及び固定資産税に相当する額、保険料その他当該リース物件を使用させるために必要となる付随費用として内閣府令で定める費用の合計額を対価として受領することを内容とするものであること。

ハ 使用期間が満了した後、リース物件の所有権又はリース物件の使用及び収益を目的とする権利が相手方に移転する旨の定めがないこと。

十八 前号に掲げる業務の代理又は媒介

十九 会員から取得した当該会員に関する情報を当該会員の同意を得て第三者に提供する業務その他当該信用金庫の保有する情報を第三者に提供する業務であつて、当該信用金庫の第一項各号に掲げる業務を行う事業の高度化又は当該信用金庫の利用者の利便の向上に資するもの

二十 当該信用金庫の保有する人材、情報通信技術、設備その他の当該信用金庫の第一項各号に掲げる業務を行う事業に係る経営資源を主として活用して行う業務であつて、地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務として内閣府令で定めるもの

4 前項第五号に掲げる業務には同号に規定する証書をもつて表示される金銭債権のうち有価証券に該当するものについて、同項第五号の三に掲げる業務には短期社債等について、金融商品取引法第二条第八項第一号から第六号まで及び第八号から第十号まで(定義)に掲げる行為を行う業務を含むものとする。

5 前二項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 短期社債等 次に掲げるものをいう。

イ 社債、株式等の振替に関する法律第六十六条第一号(権利の帰属)に規定する短期社債

ロ 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第百三十九条の十二第一項(短期投資法人債に係る特例)に規定する短期投資法人債

ハ 第五十四条の四第一項に規定する短期債

ニ 保険業法(平成七年法律第百五号)第六十一条の十第一項(短期社債に係る特例)に規定する短期社債

ホ 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第八項(定義)に規定する特定短期社債

ヘ 農林中央金庫法(平成十三年法律第九十三号)第六十二条の二第一項(短期農林債の発行)に規定する短期農林債

ト その権利の帰属が社債、株式等の振替に関する法律の規定により振替口座簿の記載又は記録により定まるものとされる外国法人の発行する債券(新株予約権付社債券の性質を有するものを除く。)に表示されるべき権利のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの

(1) 各権利の金額が一億円を下回らないこと。

(2) 元本の償還について、権利の総額の払込みのあつた日から一年未満の日とする確定期限の定めがあり、かつ、分割払の定めがないこと。

(3) 利息の支払期限を、(2)の元本の償還期限と同じ日とする旨の定めがあること。

一の二 有価証券関連デリバティブ取引又は書面取次ぎ行為 それぞれ金融商品取引法第二十八条第八項第六号(通則)に規定する有価証券関連デリバティブ取引又は同法第三十三条第二項(金融機関の有価証券関連業の禁止等)に規定する書面取次ぎ行為をいう。

二 政府保証債 政府が元本の償還及び利息の支払について保証している社債その他の債券をいう。

二の二 特定目的会社、資産流動化計画、特定社債又は特定短期社債 それぞれ資産の流動化に関する法律第二条第三項、第四項、第七項又は第八項に規定する特定目的会社、資産流動化計画、特定社債又は特定短期社債をいう。

三 有価証券の私募の取扱い 有価証券の私募(金融商品取引法第二条第三項に規定する有価証券の私募をいう。)の取扱いをいう。

三の二 振替業 社債、株式等の振替に関する法律第二条第四項(定義)の口座管理機関として行う振替業をいう。

四 デリバティブ取引 金融商品取引法第二条第二十項に規定するデリバティブ取引をいう。

五 有価証券関連店頭デリバティブ取引 金融商品取引法第二十八条第八項第四号に掲げる行為をいう。

6 信用金庫は、第一項から第三項までの規定により行う業務のほか、第一項各号に掲げる業務の遂行を妨げない限度において、次に掲げる業務(第五号及び第六号に掲げる業務にあつては、会員、地方公共団体その他内閣府令で定める者のために行うものに限る。)を行うことができる。

一 金融商品取引法第二十八条第六項に規定する投資助言業務

二 金融商品取引法第三十三条第二項各号に掲げる有価証券又は取引について、当該各号に定める行為を行う業務(第三項の規定により行う業務を除く。)

三 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により行う同法第一条第一項(兼営の認可)に規定する信託業務

四 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号(信託の方法)に掲げる方法によつてする信託に係る事務に関する業務

五 地方債又は社債その他の債券の募集又は管理の受託

六 担保付社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)により行う担保付社債に関する信託業務

七 算定割当量を取得し、若しくは譲渡することを内容とする契約の締結又はその媒介、取次ぎ若しくは代理を行う業務(第三項の規定により行う業務を除く。)であつて、内閣府令で定めるもの

7 信用金庫は、株式会社日本政策金融公庫の業務の代理を行うときは、株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)第五十六条第三号(余裕金の運用)の規定の適用については、銀行とみなす。

8 信用金庫は、次の各号に掲げる者で第三項第七号の規定による内閣総理大臣の指定を受けたものの業務の代理を行うときは、当該各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める法律の規定の適用については、銀行とみなす。

一 農業信用基金協会 農業信用保証保険法(昭和三十六年法律第二百四号)第九条第一号(基金)

二 地方住宅供給公社 地方住宅供給公社法(昭和四十年法律第百二十四号)第三十四条第二号(余裕金の運用)

9 信用金庫は、第六項第四号から第六号までに掲げる業務に関しては、信託業法(平成十六年法律第百五十四号)、担保付社債信託法その他の政令で定める法令の適用については、政令で定めるところにより、会社又は銀行とみなす。この場合においては、信託業法第十四条第二項ただし書(商号)の規定は、適用しない。

 

 

破産法

第七十二条 破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。

一 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。

二 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。

三 支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。

四 破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する破産債権の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。

一 法定の原因

二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因

三 破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因

四 破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約