多摩談合・新井組事件 公正取引委員会の審決取消請求事件 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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多摩談合・新井組事件

 

 

              審決取消請求事件

【事件番号】      最高裁判所第1小法廷判決/平成22年(行ヒ)第278号

【判決日付】      平成24年2月20日

【判示事項】      都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について複数のゼネコンがした受注予定者の決定等に関する合意が,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たるとされた事例

【判決要旨】      市町村から委託を受けるなどして都市基盤整備事業を行う法人が特定の地域において指名競争入札の方法により発注する一定規模以上の土木工事について入札参加資格を有する複数のゼネコン(広域総合建設業者)がした,①上記法人から指名競争入札の参加者として指名を受けた場合には,当該工事若しくは当該工事の施工場所との関連性が強い者又は当該工事についての受注の希望を表明する者が1名のときはその者を受注予定者とし,複数のときはそれぞれの者の上記関連性等の事情を勘案してこれらの者の話合いにより受注予定者を決め,②受注すべき価格は受注予定者が決定し,それ以外の者は受注予定者がその価格で受注できるように協力する旨の合意は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,独禁法(平成14年法律第47号による改正前のもの)2条6項所定の「不当な取引制限」に当たる。

             (1) 上記法人は,入札参加資格を有する入札参加希望者の中から指名競争入札の参加者を指名していた上,規模の大きい工事や高度な施工技術が求められる工事については,同法人の付した格付順位の上位の事業者を優先して指名しており,上位に格付けされていた上記ゼネコン及び上記地域で事業活動を行う他のゼネコンを指名することが多かった。

             (2) 上記合意をしたゼネコンは,上記合意に基づく個別の受注調整において,上記(1)の他のゼネコンからの協力が一般的に期待でき,入札に参加する地元業者の協力又は競争回避行動も相応に期待できる状況の下にあった。

             (3) 実際に発注された上記土木工事のうち相当数の工事において上記合意に基づく個別の受注調整が現に行われ,そのほとんど全ての工事において受注予定者が落札し,その大部分における予定価格に対する落札価格の割合も極めて高いものであった。

【参照条文】      私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平14法47号改正前)2-6

             私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平17法35号改正前)7の2-1

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集66巻2号796頁

 

条文の中で、「協議」というんは、「談合についての協議」の意味。

 

 

昭和二十二年法律第五十四号

昭和二十二年法律第五十四号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)

 

第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。

② この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。

一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団

二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団

三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体

③ この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。

④ この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。

一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること

二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること

⑤ この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑥ この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。

⑦ この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。

一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。

二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。

三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。

イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。

ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。

⑧ 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。

⑨ この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。

二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの

四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。

五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。

六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

ロ 不当な対価をもつて取引すること。

ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。

ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

第二章 私的独占及び不当な取引制限

第二条の二 この章において「市場占有率」とは、一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の数量のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の数量の占める割合又は一定の取引分野において一定の期間内に供給される商品若しくは役務の価額のうち一若しくは二以上の事業者が供給し、若しくは供給を受ける当該商品若しくは役務の価額の占める割合をいう。

② この章において「子会社等」とは、事業者の子会社(法人がその総株主(総社員を含む。以下同じ。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権及び社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第百四十七条第一項又は第百四十八条第一項の規定により発行者に対抗することができない株式に係る議決権を含む。以下この項及び次項において同じ。)の過半数を有する他の会社をいう。この場合において、法人及びその一若しくは二以上の子会社又は法人の一若しくは二以上の子会社がその総株主の議決権の過半数を有する他の会社は、当該法人の子会社とみなす。以下この項において同じ。)若しくは親会社(会社を子会社とする他の会社をいう。以下この項において同じ。)又は当該事業者と親会社が同一である他の会社をいう。

③ この章において「完全子会社等」とは、事業者の完全子会社(法人がその総株主の議決権の全部を有する他の会社をいう。この場合において、法人及びその一若しくは二以上の完全子会社又は法人の一若しくは二以上の完全子会社がその総株主の議決権の全部を有する他の会社は、当該法人の完全子会社とみなす。以下この章及び第五章において同じ。)若しくは完全親会社(会社を完全子会社とする他の会社をいう。以下この項において同じ。)又は当該事業者と完全親会社が同一である他の会社をいう。

(後略)

 

 

第三条 事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。

 

第七条 第三条又は前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、事業の一部の譲渡その他これらの規定に違反する行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。

② 公正取引委員会は、第三条又は前条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、第八章第二節に規定する手続に従い、次に掲げる者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる。ただし、当該行為がなくなつた日から七年を経過したときは、この限りでない。

一 当該行為をした事業者

二 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人

三 当該行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人

四 当該行為をした事業者から当該行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者