法人に非ざる社団の成立要件
建物収去土地明渡請求事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和35年(オ)第1029号
【判決日付】 昭和39年10月15日
【判示事項】 1、法人に非ざる社団の成立要件
2、法人に非ざる社団の資産の帰属
【判決要旨】 1、法人に非ざる社団が成立するためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原理が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において、代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。
2、法人に非ざる社団がその名においてその代表者により取得した資産は、構成員に総有的に帰属するものと解すべきである。
【参照条文】 民法33
民法37
民事訴訟法46
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集18巻8号1671頁
明治二十九年法律第八十九号
民法
民法第一編第二編第三編別冊ノ通定ム
此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
明治二十三年法律第二十八号民法財産編財産取得編債権担保編証拠編ハ此法律発布ノ日ヨリ廃止ス
(別冊)
目次
第一編 総則
第一章 通則(第一条・第二条)
第二章 人
第一節 権利能力(第三条)
第二節 意思能力(第三条の二)
第三節 行為能力(第四条―第二十一条)
第四節 住所(第二十二条―第二十四条)
第五節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告(第二十五条―第三十二条)
第六節 同時死亡の推定(第三十二条の二)
第三章 法人(第三十三条―第八十四条)
第三章 法人
(法人の成立等)
第三十三条 法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
2 学術、技芸、慈善、祭祀し、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。
(法人の能力)
第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
(外国法人)
第三十五条 外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。
2 前項の規定により認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利及び法律又は条約中に特別の規定がある権利については、この限りでない。
(登記)
第三十六条 法人及び外国法人は、この法律その他の法令の定めるところにより、登記をするものとする。
(外国法人の登記)
第三十七条 外国法人(第三十五条第一項ただし書に規定する外国法人に限る。以下この条において同じ。)が日本に事務所を設けたときは、三週間以内に、その事務所の所在地において、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 外国法人の設立の準拠法
二 目的
三 名称
四 事務所の所在場所
五 存続期間を定めたときは、その定め
六 代表者の氏名及び住所
2 前項各号に掲げる事項に変更を生じたときは、三週間以内に、変更の登記をしなければならない。この場合において、登記前にあっては、その変更をもって第三者に対抗することができない。
3 代表者の職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされたときは、その登記をしなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。
4 前二項の規定により登記すべき事項が外国において生じたときは、登記の期間は、その通知が到達した日から起算する。
5 外国法人が初めて日本に事務所を設けたときは、その事務所の所在地において登記するまでは、第三者は、その法人の成立を否認することができる。
6 外国法人が事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に第一項各号に掲げる事項を登記しなければならない。
7 同一の登記所の管轄区域内において事務所を移転したときは、その移転を登記すれば足りる。
8 外国法人の代表者が、この条に規定する登記を怠ったときは、五十万円以下の過料に処する。
第三十八条から第八十四条まで 削除
【出 典】 判例タイムズ169号117頁
講学上いわゆる権利能力のない社団(法人に非ざる社団)、たとえば同業会、町会、学校の校友会、学校などで法人組織でないものや設立中の会社は、法人格を有しないが、訴訟上は法人である団体と同様に取り扱われることは、民訴法46条の定めるところである。
権利能力のない社団として認められるためには、団体としての組織が確定していなけれならない。
権利能力のない社団については、前記法条のほか実定法上なんら明文がないが、社団法人に関する民法37条と同様の定款を必要とするものと解されている。
これまで権利能力のない社団の成立要件を明示した判例はみあたらないが、本判決はこれを明確にしたものである。
権利能力のない社団は、その代表者によつてその社団の名において第三者と種々の契約をなし、構成員全体のために権利を取得し、義務を負担するものと認められている。
この社団の資産は、構成員個人の資産と区別されて、独立の責任財産として認められる。
権利能力のない社団の有する資産は構成員の総有に属するものであつて、その管理処分権は社団に属し、その利用収益権は各構成員に属し、構成員は社団の財産について持分を有しないことは、通説の認めるところである。
本判決はこの点についても学説を是認したものである。