恩給受給者が国民金融公庫からの借入金の担保に供した恩給につき国が公庫にその払戻しを完了した後に恩 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

恩給受給者が国民金融公庫からの借入金の担保に供した恩給につき国が公庫にその払戻しを完了した後に恩給裁定が取り消された場合における国の公庫に対する払渡金返還請求の許否

 

 

不当利得返還請求事件

【事件番号】      最高裁判所第3小法廷判決/昭和62年(オ)第253号

【判決日付】      平成6年2月8日

【判示事項】      恩給受給者が国民金融公庫からの借入金の担保に供した恩給につき国が公庫にその払戻しを完了した後に恩給裁定が取り消された場合における国の公庫に対する払渡金返還請求の許否

【判決要旨】      恩給受給者甲が国民金融公庫(乙)からの借入金の担保に供した恩給につき国が乙にその払渡しをした後に、甲に対する恩給裁定が取り消されたとしても、乙は甲に対して恩給を担保に貸付けをすることを法律上義務付けられており、しかも恩給裁定の有効性については乙自ら審査することはできず、これを有効なものと信頼して扱わざるを得ないものであることなど、判示事情の下において、国が恩給裁定の取消しの効果が乙に及ぶとして、右払渡しに係る金員の返還を求めることは許されない。

【参照条文】      国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律3

             民法703

【掲載誌】        最高裁判所民事判例集48巻2号123頁

 

 

民法

第四章 不当利得

(不当利得の返還義務)

第七百三条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)

第七百四条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

 

 

昭和二十九年法律第九十一号

株式会社日本政策金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律

(目的)

第一条 この法律は、株式会社日本政策金融公庫が恩給等を担保として貸付けをする場合におけるその担保の効力に関する規定を設けるとともに、その業務の範囲を拡張することにより、恩給等を担保とする金融の円滑化を図ることを目的とする。

(用語の定義)

第二条 この法律において「恩給等」とは、次に掲げるものをいう。

一 恩給法(大正十二年法律第四十八号)その他の法令に規定する恩給で年金として給されるもの

二 戦傷病者戦没者遺族等援護法(昭和二十七年法律第百二十七号)第五条(援護の種類)に規定する障害年金、遺族年金及び遺族給与金

2 この法律において「受給証書」とは、恩給等が給されることを証する書面をいう。

(担保に供された恩給等の支払)

第三条 株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)に担保に供された恩給等については、その担保に供されている間は、公庫だけがこれに係る恩給等の支払を受けることができる。

2 公庫は、担保に供された恩給等について支払を受ける金銭をもつて当該担保に係る貸付金の弁済に充当するものとする。

(受給権の放棄の禁止)

第四条 恩給等を担保に供して公庫から貸付を受けた者は、その債務の全部の弁済が終るまでは、その担保に係る恩給等を受ける権利を放棄することができない。

(担保の範囲)

第五条 公庫が、恩給等について担保権を有する場合において、その担保に供された恩給等の受給額が改定されたときは、改定後の恩給等の上に担保権を有する。

2 恩給等を担保に供した場合においては、その担保の効力は、当該恩給等を担保に供した者の遺族(その担保に供した者が遺族であるときは、その後順位者)が受ける恩給等の上には及ばない。

(証書の引渡し)

第六条 恩給等を担保に供する者は、その受給証書を公庫に引き渡さなければならない。但し、裁定前の恩給等を担保に供する場合その他受給証書の発行がない場合においては、この限りでない。

(裁定庁への通知)

第七条 恩給等を担保として貸付をしたとき、又はその担保権が消滅したときは、公庫は、遅滞なく、その旨を当該恩給等の裁定をする機関(以下「裁定庁」という。)及びその支払をする機関に通知しなければならない。但し、裁定前の恩給等を担保として貸付をした場合においてその支払をする機関に対してする通知は、当該恩給等について裁定があつた後にすればよい。

(証書の公庫への交付)

第八条 裁定庁は、公庫に担保に供された恩給等について受給証書を発行し、又は再発行する場合においては、当該証書を公庫に交付しなければならない。

(公庫の代位)

第九条 公庫は、恩給等を担保に供した者に代つて、恩給等に関する請求、裁定庁に対する書類の提出その他恩給等の保全に必要な行為をすることができる。

(公庫の業務の特例)

第十条 公庫は、株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)第十一条第一項第一号及び第二号並びに第二項第一号の規定にかかわらず恩給等を担保とする場合に限り、これらの規定による貸付け以外の貸付けの業務を行うことができる。

2 前項の業務は、株式会社日本政策金融公庫法の適用については、同法第十一条第一項第一号の規定による同法別表第一第一号の下欄に掲げる資金の貸付けの業務とみなす。