特別交付税決定処分の処分性と地方交付税法の委任の範囲 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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泉佐野市対国事件(第一審判決)

 

 本判決は、「ふるさと納税寄附金(地方税法37条の2、314条の7)」に係る収入が一定額に及ぶことを特別交付税の減額要因とする旨を定める、地方交付税に関する総務省令附則5条21項・7条15項の各規定が、授権規定である地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱したものとして無効であるなどと判断したものである。

 

 

【判例番号】      L07750028

             特別地方交付税の額の決定取消請求事件

【事件番号】      大阪地方裁判所判決/令和2年(行ウ)第66号

【判決日付】      令和4年3月10日

【判示事項】      1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか

             2 地方交付税法15条2項に基づく総務大臣による特別交付税の額の決定を受けた地方団体は、当該決定の取消しを求める訴えの利益を有するか

             3 特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の各規定の法適合性

【判決要旨】      1 地方交付税法15条2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

             2 地方交付税法15条2項に基づく総務大臣による特別交付税の額の決定を受けた地方団体は、当該決定の取消しを求める訴えの利益を有する。

             3 特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)の各規定は、いずれも地方交付税法15条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である。

【参照条文】      地方交付税法15-1

             地方交付税法15-2

             特別交付税に関する省令附則(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)5-21

             特別交付税に関する省令附則(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)7-15

【掲載誌】        LLI/DB 判例秘書登載

【評釈論文】      法学教室502号116頁

             地方財務818号186頁

 

       主   文

 

 1 処分行政庁が令和元年12月に原告に対してした,令和元年度の第1回目の特別交付税の額の決定を取り消す。

 2 処分行政庁が令和2年3月に原告に対してした,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定を取り消す。

 3 訴訟費用は被告の負担とする。

 

       事実及び理由

 

第1 請求

 主文同旨

第2 事案の概要

  地方団体である原告(泉佐野市)は,総務大臣から,令和元年12月,令和元年度の第1回目の特別交付税の額の決定(以下「本件12月分決定」という。)を受け,令和2年3月,令和元年度の第2回目の特別交付税の額の決定(以下「本件3月分決定」といい,本件12月分決定と併せて「本件各決定」という。)を受けた。

  本件は,原告が,令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた,特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの。以下同じ。)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの。特に断らない限り,以下同じ。以下「本件各特例規定」という。)は,いわゆるふるさと納税として地方税法37条の2及び同法314条の7の規定により個人の都道府県民税及び市町村民税(以下「個人住民税」という。)の特例控除の対象となる寄附金(以下「ふるさと納税寄附金」という。)に係る収入が多額であることをもって,特別交付税の額を減額するものであって,地方交付税法(昭和25年法律第211号)の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるから,本件各特例規定に基づいて原告に対して交付する令和元年度の特別交付税の額を算定した本件各決定は違法であるなどと主張して,被告を相手に,本件各決定の取消しを求める事案である。

  なお,当裁判所は,令和3年4月22日,本件訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるとする中間判決を言い渡した。

 1 関係法令の定め

(後略)