【判例番号】 L07530912
損害賠償請求事件
【事件番号】 東京地方裁判所判決/平成29年(ワ)第30571号
【判決日付】 令和2年6月30日
【判示事項】 ソーシャルレンディングの仲介業者による投資の勧誘が不法行為に該当するとされた事例
【判決要旨】 ホームページにおいて、信用リスクを分散するために複数の多様な投資対象案件が用意されており、その中から投資先を選ぶことができるような表示をして匿名組合の出資持分の取得を勧誘していたにもかかわらず、実際には、出資金の大部分が経済的一体性を有するグループ会社に貸し付けられていたなどの判示の事実関係のもとにおいては、上記勧誘は不法行為に該当する。
【参照条文】 民法709
民法719
【掲載誌】 金融・商事判例1599号18頁
金融法務事情2149号79頁
【評釈論文】 金融法務事情2169号70頁
主 文
1 被告らは、別紙2請求一覧表の「原告」欄記載の各原告に対し、連帯して、同表の各原告に係る「請求額」欄記載の各金員及びこれに対する平成29年3月30日から各支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要等
1 事案の概要
本件は、被告株式会社Y1(旧商号「株式会社Y1’」)から匿名組合の出資持分の取得を勧誘されて投資した原告らが、被告株式会社Y1はホームページ上に真実に反する表示をして違法な勧誘を行い、その余の被告らはこれを共同実行したなどと主張して、被告らに対し、共同不法行為に基づき、それぞれ別紙2請求一覧表の「請求額」欄記載の各金員及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年3月30日から各支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による各遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
2 前提事実(証拠を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨から容易に認められる。)
(1)ア 被告株式会社Y1(平成30年3月27日変更前の商号は「株式会社Y1’」。以下、上記商号変更の前後を問わず、「被告Y1」といい、旧商号当時の表示として「Y1’」ということがある。)は、有価証券の募集又は私募の取扱い、貸金業等を目的とする株式会社であり、貸金業者及び第二種金融商品取引業者の登録を受けている。
イ 被告株式会社Y2(平成29年10月31日変更前の商号は「株式会社Y2’」。以下、上記商号変更の前後を問わず、「被告Y2」という。)は、不動産の売買・交換・賃貸借及びその仲介等を目的とする株式会社であり、平成29年5月23日まで、被告Y1の100%親会社であった。
ウ 被告有限会社Y5(以下「被告Y5」という。)は、不動産の管理、斡旋、賃貸、売買、仲介等を目的とする有限会社であり、被告Y2の親会社である。
エ 被告株式会社Y3(以下「被告Y3」という。)は、リラクゼーションサロンの経営等を目的とする株式会社であり、被告Y2の100%子会社である。
オ 被告株式会社Y4(以下「被告Y4」という。)は、絵画、美術工芸品、彫刻類の売買、賃貸等を目的とする株式会社であり、被告Y2の100%子会社である。
カ 被告Y6(以下「被告Y6」という。)は、被告Y1及び被告Y2の代表取締役を兼務していたが、平成29年4月29日、被告Y1の代表取締役を辞任した。
A(以下「A」という。)は被告Y6の妻、Bは被告Y6の長男であり、C(以下「C」という。)は、Aの父で被告Y6の義父である。
キ 被告Y1、被告Y2、被告Y5、被告Y3及び被告Y4(以下、併せて「被告会社ら」という。)の本店所在地、役員構成等は、別紙3被告会社ら一覧表記載のとおりである。
(2) 被告Y1は、いわゆるソーシャルレンディング事業として、ホームページを通じて匿名組合の出資持分の取得を勧誘し、投資された資金を原資として借入人に金員を貸し付け、その返済及び利息の支払を受けて投資家に分配するものとしていた(甲4)。
原告らは、それぞれ、被告Y1から勧誘を受けて、被告Y1に対し、平成28年5月頃から平成29年3月頃までの間、別紙4出資状況一覧表記載のとおり投資した。
(3) 関東財務局は、平成29年3月30日、被告Y1に対し、金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為があったなどとして、同日から同年4月29日までの業務停止命令(金融商品取引法52条1項)及び業務改善命令(同法51条)を発した(甲11)。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 被告Y1の不法行為の成否(争点1)
(後略)