取締役の解任を株主総会の議案とするかどうかについての取締役会の決議について、当該取締役が会社法369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」に当たるとされた事例
東京地方裁判所決定/平成29年(ヨ)第20094号
平成29年9月26日
株主総会開催禁止等仮処分命令申立事件
『平成30年度重要判例解説』商法事件
【判示事項】 取締役の解任を株主総会の議案とするかどうかについての取締役会の決議について、当該取締役が会社法369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」に当たるとされた事例
【判決要旨】 取締役会において取締役の解任議案が株主総会に提出されるか否かが決定される場合には、当該取締役が自己の身分に係る重大な利害関係を有することは明らかであって、会社に対して負担する忠実義務に従い、公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、むしろ自己の利益を図って議決権行使をすることも否定できないから、当該取締役は、会社法369条2項により、議決に加わることができないとすることが相当であるとする。
【参照条文】 会社法360
会社法369-2
【掲載誌】 金融・商事判例1529号60頁
【評釈論文】 ジュリスト1516号2頁
ジュリスト1528号111頁
ジュリスト1531号99頁
法学教室450号140頁
明治学院大学法学研究106号117頁
法学セミナー63巻6号119頁
【解説】
1 本件は、債務者Cの株主であり、かつ代表取締役である債権者Aおよび債権者B(以下、「債権者ら」という)が、①平成29年9月27日午後2時を会日とする別紙「会議目的事項等に関する目録」記載1の会議の目的である事項のための債務者Cの臨時株主総会(以下、「本件臨時株主総会」という)につき、平成29年9月15日の取締役会において招集決議(以下、「本件取締役会決議①」という)がされたが、同決議には会社法369条違反があるなどと主張し、本件臨時株主総会の招集権者である債務者Dに対する会社法360条に基づく取締役会の違法行為差止請求権を本案として、本件臨時株主総会の開催禁止の仮処分命令を求める(以下、「本件申立て①」という)とともに、②債務者Eは、債務者C株式を有効に取得していないなどと主張し、株主権に基づく妨害排除請求権を本案として、本件臨時株主総会における債務者Eの議決権行使禁止の仮処分命令を求める(以下、「本件申立て②」という)事案である。
本件申立て①については、本件臨時株主総会の各議案で解任対象とされている取締役(以下、「対象取締役」という)を会社法369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」(以下、「特別利害関係取締役」という)に該当するとして議決に加えなかったことが同条項に違反するかどうかが問題となっている。
2 本決定は、特別利害関係取締役を取締役会の議決に加わることができないとしている会社法369条2項の趣旨について、特定の取締役が会社に対する忠実義務(同法355条)を誠実に履行することが定型的に困難と認められる個人的利害ないし会社外の利害関係を有する場合に、取締役個人と会社の間の利害対立を事前に防止するために、当該取締役の議決権行使を否定するところにあると解されるとする。
その上で、対象取締役は、取締役会において自己の解任議案が株主総会に提出されるか否かが決定される以上、自己の身分に係る重大な利害関係を有することは明らかであって、会社に対して負担する忠実義務に従い、公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、むしろ自己の利益を図って議決権行使をすることも否定できない。そうだとすると、忠実義務違反を予防し、取締役個人と会社との間の利害対立を事前に防止するために、対象取締役は、議決に加わることができないとすることが相当であるとする。
よって、本件取締役会決議①において、対象取締役が特別利害関係取締役に該当するとして議決に加えなかったことに会社法369条2項違反はなく、本件取締役会決議①を違法ならしめる事由は認められないから、本件臨時株主総会の招集手続に重大な法令違反があり、無効であるとはいえないとして、本件臨時株主総会の招集権者である債務者Eに違法行為があると認められず、本件申立て①に理由がないとする。