支店長付きの運転手が自動車運転の業務中に発症したくも膜下出血が業務上の疾病に当たるとされた事例
最高裁判所第1小法廷判決/平成7年(行ツ)第156号
平成12年7月17日
休業補償不支給決定取消請求事件
【判示事項】 支店長付きの運転手が自動車運転の業務中に発症したくも膜下出血が業務上の疾病に当たるとされた事例
【判決要旨】 支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が早朝支店長を迎えに行くため運転中くも膜下出血を発症した場合において、同人が右発症に至るまで相当長期間にわたり従事していた右業務は精神的緊張を伴う不規則なものであり、その労働密度は決して低くはなく、右発症の約半年前以降は1日平均の時間外労働時間が7時間を上回り、1日平均の走行距離も長く、右発症の前日から当日にかけての勤務も、前日の午前5時50分に出庫し、午後11時ころまで掛かってオイル漏れの修理をして午前1時ころ就寝し、わずか3時間30分程度の睡眠の後、午前4時30分ころ起床し、午前5時の少し前に当日の業務を開始したというものであり、それまでの長期間にわたる過重な業務の継続と相まって、同人にかなりの精神的、身体的負荷を与えたものとみるべきであって、他方では、同人は、くも膜下出血の発症の基礎となり得る疾患を有していた蓋然性が高い上、くも膜下出血の危険因子として挙げられている高血圧症が進行していたが、治療の必要のない程度のものであったなど判示の事情の下においては、同人の発症したくも膜下出血は業務上の疾病に当たる。
【参照条文】 労働者災害補償保険法7-1
労働者災害補償保険法(平7法35号改正前)12の8-1
労働者災害補償保険法(平7法35号改正前)12-2
労働基準法75
労働基準法76-1
労働基準法施行規則35
【掲載誌】 訟務月報47巻10号3044頁
最高裁判所裁判集民事198号461頁