日本国有鉄道法31条1項所定の懲戒処分の選択と懲戒権者の裁量 最高裁判所第1小法廷判決 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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日本国有鉄道法31条1項所定の懲戒処分の選択と懲戒権者の裁量

 

最高裁判所第1小法廷判決/昭和45年(オ)第1196号

昭和49年2月28日

雇用関係存続確認等請求事件

国鉄中国支社事件

【判示事項】    1、日本国有鉄道法31条1項に基づく懲戒処分の性質

2、懲戒事由を定めた日本国有鉄道就業規則66条17号にいう「著しく不都合な行い」と職場外の行為

3、日本国有鉄道法31条1項所定の懲戒処分の選択と懲戒権者の裁量

4、日本国有鉄道職員に対する懲戒免職処分の効力が裁量の範囲をこえないものとして是認された事例

【判決要旨】    1、日本国有鉄道法31条1項に基づく懲戒処分は、行政処分ではなく、私法上の行為である。

2、日本国有鉄道法31条1項1号に基づき懲戒事由を定めた日本国有鉄道就業規則66条17号にいう「著しく不都合な行い」には、日本国有鉄道の社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認められる職場外の職務遂行に関係のない行為で著しく不都合なものと評価されるものをも包含する。

3、日本国有鉄道法31条1項に定める懲戒処分の選択については、懲戒権者たる日本国有鉄道総裁に裁量が認められているのであつて、当該懲戒処分が、その原因となつた行為との対比において甚だしく均衡を失し、社会通念に照らして合理性を欠く等裁量の範囲をこえてされたものでないかぎり、その効力を否定することはできない。

4、文部省及び県教育委員会共催の教育課程研究協議会の開催反対運動に参加した際、警察官の職務を妨害した日本国有鉄道職員に対し日本国有鉄道法31条1項に基づいて去れた懲戒免職処分は、右所為がその態様において積極性が認められるのみならず、それにつき懲役6月執行猶予2年の有罪判決が確定し、しかも、右所為がそれ以前に犯した暴力行為等処罰に関する法律違反の罪により起訴されて休職となつている間にされたものであり、更に、右所為以後に戒告又は減給の懲戒処分5回を受けている等判示の事情があるときは、懲戒権者の処分選択の裁量の範囲をこえないものとしてその効力を是認すべきである。

【参照条文】    日本国有鉄道法31-1

          行政事件訴訟法3-2

          労働基準法89

【掲載誌】     最高裁判所民事判例集28巻1号66頁