訴因変更が必要であるとされた事例
高松高等裁判所判決/昭和46年(う)第244号
昭和47年6月14日
公職選挙法違反事件
【判示事項】 訴因変更が必要であるとされた事例
【判決要旨】 公職選挙法249条の5第2項違反の罪(同法199条の5第2項で禁止する供与等の行為を個人でした場合)の起訴に対して、同法第249条の5第3項違反の罪(右行為を法人または団体がしたとき、その役職員または構成員として当該違反行為をした場合)を認定するについては、訴因の変更が必要である。
【参照条文】 公職選挙法199の5-2
公職選挙法249の5-2
公職選挙法249-3
刑事訴訟法312
【掲載誌】 高等裁判所刑事裁判速報集373号
刑事裁判月報4巻6号1102頁
判例タイムズ282号284頁
判例時報677号104頁
【解説】
訴因変更の要否の基準については、周知のように、事実記載説と法律構成説とがあるが、判例は事実記載説を基調とし、被告人の防禦に実質的な不利益を来たさない場合を除き、起訴事実と異なつた事実を認定するには訴因の変更が必要であるとする(佐々木史朗「訴因の性格」ジュリスト500・434)。
判決要旨記載のような、公選法249条の5第2項違反の罪の起訴に対して同第3項違反の罪を認定する場合については、一応は、いずれの立場からも訴因変更を必要とするということになりそうである。
ただ、本判決によれば、被告人らは供与行為につき団体の機関として関与したにすぎない旨主張していたようであり、そうすると、事実記載説のうち、被告人の防禦に実質的に不利益かどうかは、被告人の弁解の仕方等審理の過程における具体的事情によつてこれを決するという立場からは、訴因変更を要しない場合であるとする余地もないわけではないように思われる。
判例は伝統的には、右の審理の過程における具体的事情を考慮する立場をとつてきたが、最近では、訴因事実と認定事実とを抽象的に比較して被告人の防禦に実質的な不利益を来たすかどうかを決する立場に立つと思われるものも現われている(最判昭40・4・28刑集19・3・270、同昭41・7・26同20・6・711、最決昭40・12・24刑集19・9・827。