Y社取締役Bが,Xに対し早朝,深夜,休日,退職後に本件ナビシステムを利用して居場所確認を行ったことは,Xに対する監督権限を濫用するもので違法であって,不法行為を構成し,その損害は10万円が相当であり,BはY社の業務の執行につき不法行為をしたというべきであるから,Y社は民法715条の使用者責任を負うとされた例
東京地方裁判所判決/平成20年(ワ)第24169号、平成20年(ワ)第23474号
平成24年5月31日
東起業事件
債務不存在確認等請求(甲事件)、損害賠償請求事件(乙事件)
【判示事項】 1 原告Xが被告Y社の顧問弁護士に送金した525万9000円および5758万2622円につき,Xが主張する預託契約の成立が否定された例
2 XはY社の下請業者に適正な請負代金に水増しした金額をY社に請求させるとともに,当該下請業者がY社から支払いを受けた請負代金の中から,Xの管理する複数のダミー会社の預金口座に外注費として振り込ませる方法によって蓄財した合計4億596万8716円を,個人的な株取引等に費消し,Y社に同額の損害を与えたとされた例
3 Y社がXに対して有する労働契約上の債務につき,商行為によって生じた債務ということができるから,商法522条に基づき,その消滅時効は5年になるとされた例
4 XはY社に対し,労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務を負担しているというべきであるが,時効中断の効果がある本件仮差押命令の請求債権5000万円を除くその余の部分については消滅時効の完成が認められるとされた例
5 本件会議の議事録は,会社外部に開示することは予定されておらず,Xは,Y社内部で問題を解消する機会があったから,このような手順を踏まずに,自己の弁明のために本件開示行為に及んだことは,仮にK部長との信頼関係を維持するなどの目的があったとしても,その不当性は払拭されないとされた例
6 Xの各行為は懲戒規程に該当し,また社内手続きについても特段,違法・不当はうかがわれないから,本件減給処分は,客観的,合理的理由があり,社会通念上相当であるから,有効であるとされた例
7 本件ナビシステムの導入は,Y社主張の目的が認められ,当該目的には相応の合理性もあるということができ,そうすると労務提供が義務付けられる勤務時間帯およびその前後の時間帯において,Y社が本件ナビシステムを使用してXの勤務状況を確認することが違法であるということはできないが,反面,早朝,深夜,休日,退職後のように,従業員に労務提供義務がない時間帯,期間において本件ナビシステムを利用してXの居場所を確認することは,特段の必要性のない限り,許されないとされた例
8 Y社取締役Bが,Xに対し早朝,深夜,休日,退職後に本件ナビシステムを利用して居場所確認を行ったことは,Xに対する監督権限を濫用するもので違法であって,不法行為を構成し,その損害は10万円が相当であり,BはY社の業務の執行につき不法行為をしたというべきであるから,Y社は民法715条の使用者責任を負うとされた例
9 未払いの資格手当・役付手当につき,50万余円の過払い分があり,賃金の未払いは存在しないとのY社主張は,過払賃金相当額の不当利得返還請求権を自働債権とし,賃金支払請求権を受働債権とする相殺の主張であると解すべきところ,労基法24条に基づき,使用者に生じた債権をもって労働者の賃金債権と相殺することは許されないとされ,Xの請求のうち24万円分のみの支払いが認められた例
【掲載誌】 労働判例1056号19頁