商法204条ノ2第2項により譲渡の相手方と指定された者が同法204条ノ3第1項により株式売渡請求権を行使した場合とその撤回の許否(消極)
仙台高等裁判所決定/昭和62年(ラ)第59号
昭和63年2月8日
株式売買価格決定に対する抗告事件
【判示事項】 商法204条ノ2第2項により譲渡の相手方と指定された者が同法204条ノ3第1項により株式売渡請求権を行使した場合とその撤回の許否(消極)
【参照条文】 商法204の2
商法204の3
商法204の4
【掲載誌】 判例タイムズ664号199頁
判例時報1272号136頁
【解説】
1、事案は、A会社では、定款で、株式の譲渡について取締役会の承認を必要とする旨を定めており、株主甲(申請人、被抗告人)は、A社に対し、株式約3万株を乙に譲渡することについての承認と承認を得られない場合の譲渡の相手方の指定を求め、A社は、甲に対し、譲渡を承認せず、譲渡の相手方を丙ら(抗告人)と指定する旨を通知した(商法204条ノ2参照)。
相手方(丙、抗告人)らは、A社の純資産約8970万円を発行株式総数18万株で割った額498円を上回る500円に前記株式数を乗じた1500万円余を供託して、書面で甲に対し本件株式を相手方丙らに売り渡すべき旨を請求した。
甲は、本件株券を供託し、相手方丙らに通知し、甲と丙らは、株券の売買価格について、協議したが、協議が整わないので、甲は、1株1000円は下らないとして、その株式の売買価格の決定を裁判所に求めたものである。
2、1審は、株式の売買価格について、純資産価額方式、配当還元方式、類似会社業種比準方式の各方式があるが、純資産価額方式によることが妥当であるとして、売買価格を1株1095円と定める旨を決定し、本件株式売買契約の解除、A社の取締役会で甲の株式譲渡承認の決議がなされ手続き続行の利益の喪失などの主張を排斥した。
原審相手方(丙、抗告人)らが抗告。
3、抗告審の判断は、原決定の事実関係の認定を是認したうえ、(1)「商法204条ノ2、第2項の規定により株式の譲渡の相手方と指定された者が、同法204条ノ3、第1項の規定により、株主に対し、株式を自己に売り渡すべき旨を請求したときは、この請求によって、株主と右譲渡の相手方と指定された者との間に、当該株式について売買契約が成立するものと解すべきである。
」と判示した上、(2)売買成立後、その請求をした者は、1方的に請求を撤回できなく、また、(3)同法204条ノ4、第6項による売買の解除もすることができないとし、(4)取締役会の譲渡の承認、株式の譲受けの意思の放棄などの主張については、売買成立後のことであり、売買の効力に消長を及ぼさないといい、抗告を棄却した。