D学長およびE学部長ならびにY法人としての解雇の意思表示を議決した懲戒等審査委員会は,本件解雇に至るまでに,Xが引き起こした問題の背景にアスペルガー症候群が存在することを前提として,解雇事由の判断を審査したり,Xに必要な配慮の調査,解雇以外に雇用を継続するための努力の検討がなされていないことから,Xに対して行ってきた配慮がY法人の限界を超えていたと評価することは困難であるとされた例
京都地方裁判所判決/平成26年(ワ)第1148号
平成28年3月29日
地位確認等請求事件
【判示事項】 1 原告Xは,被告Y法人との間で労働契約を締結し,勤務していたのであるから,XとY法人との関係は,民間企業における使用者と労働者との関係と同様の労働契約関係である以上,その解雇の有効性の審査に関して労働契約法16条の適用が除外されると解釈することは相当とはいえないとされた例
2 一般的には問題があると認識し得る行為であっても,Xにおいては,アスペルガー症候群に由来して当然にその問題意識を理解できているものではないという特殊な前提が存在するのであって,Y法人から,Xに対して,当該行為についての指導ないし指摘がまったくなされておらず,Xに改善の機会が与えられていない以上,Xには問題行動とみる余地のある行動を改善する可能性がなかったものと即断することはできないとされた例
3 障害者基本法19条2項等の法の理念や趣旨をも踏まえると,障害者を雇用する事業者においては,障害者の障害の内容や程度に応じて一定の配慮をすべき場合も存することが予定されているというべきであるとされた例
4 D学長およびE学部長ならびにY法人としての解雇の意思表示を議決した懲戒等審査委員会は,本件解雇に至るまでに,Xが引き起こした問題の背景にアスペルガー症候群が存在することを前提として,解雇事由の判断を審査したり,Xに必要な配慮の調査,解雇以外に雇用を継続するための努力の検討がなされていないことから,Xに対して行ってきた配慮がY法人の限界を超えていたと評価することは困難であるとされた例
5 Y法人は,Xの優れた経歴や能力を評価し,Y法人が運営する大学にふさわしい教員であると認めて,教員として採用し,それ以降,使用者として,そのような優れた経歴や能力を持つ教員を擁しているという利益を享受していたものであって,その後,Xの障害が判明し,これに起因して一定の配慮が必要となったとしても,これはY法人としてある程度は甘受すべきものであるということもでき,その積み重ねによって対応に苦慮することとなったとしても,Xを大学教員としての適格性を欠くとの理由で直ちに解雇し,Xにその負担を負わせることは,公平を欠くものといわざるを得ないとされた例
6 労働契約法16条に照らすと,Xが大学教員として必要な適格性を欠くことを理由とする解雇は,就業規則所定の解雇理由に該当する事由があるとは認められないから,客観的に合理的な理由を欠くものであって,無効であるとされた例
7 E学部長によるXへの連絡や解雇審査手続きへの関与,懲戒等審査委員会による解雇審査手続きには,Xの権利を侵害した違法があるとは認められないとして,不法行為に基づくXの損害賠償請求が否定された例
【掲載誌】 労働判例1146号65頁