労働基準法39条5項所定の労使協定に基づく年次有給休暇の計画的付与がされた場合につき、その協定に反対する労働者も拘束されるとした事例
福岡高等裁判所判決/平成4年(ネ)第306号
平成6年3月24日
年次有給休暇保有日数確認並びに未払賃金請求控訴事件
【判示事項】 1、労働基準法39条5項の意義
2、労働基準法39条5項所定の労使協定に基づく年次有給休暇の計画的付与がされた場合につき、その協定に反対する労働者も拘束されるとした事例
【判決要旨】 1、労働基準法が、同法39条5項所定の労使協定に基づく年次有給休暇の計画的付与制度を設けたのは、我が国における年次有給休暇の取得率が極めて低い水準にとどまっていることにかんがみ、労働者が事業の繁忙や職場の他の労働者への業務のしわ寄せ等を気兼ねすることなく年次有給休暇を取得することを可能にすること及びその本来の姿である連続・長期の取得を可能にすることによって、取得率を向上させ、労働時間の短縮と余暇の活用を推進しようとしたものであり、当該労使協定によって年次有給休暇の取得時季が集団的統一的に特定されると、その日数について個々の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権は当然に排除され、その効果は当該協定により適用対象とされた事業場の全労働者に及ぶ。
2、造船会社が、その事業場の労働者の約98パーセントで組織される労働組合との間で締結した労働基準法39条5項所定の労使協定に従って実施した年次有給休暇の計画的付与につき、同協定の効果は同協定により適用対象とされた事業場の全労働者に及ぶものであり、これに反対する労働組合の労働者を当該協定によって拘束することが著しく不合理となるような特別の事情が認められる場合や、同協定の内容が著しく不公正であって、これを前記労働者に及ぼすことが計画年休制度の趣旨を没却するような場合に当たると認められないから、これらの労働者もこれに拘束されるとした事例
【参照条文】 労働基準法39-5
【掲載誌】 労働関係民事裁判例集45巻1~2号123頁