外国法人の退職勧奨を拒否した従業員に対してなされた配転命令が人事権の濫用として無効とされた事例
神戸地方裁判所判決/平成15年(ワ)第1068号
平成16年8月31日
地位確認等請求事件
【判示事項】 外国法人の退職勧奨を拒否した従業員に対してなされた配転命令が人事権の濫用として無効とされた事例
【参照条文】 労働基準法2章
【掲載誌】 判例タイムズ1179号221頁
労働判例880号52頁
【解説】
(1)事件の概要 本件は,被告Y1社に雇用され,市場調査業務等を担当していた原告Xが,上司であった被告Y2から,仕事を与えられないまま,賃金上昇に関連する「ジョブ・バンド」職位を降下するという内容の「スペシャル・アサインメント」を提示され,あわせての退職勧奨を拒否したところ,他部門の単純事務作業に従事し,職位も降下する内容の「本件配転命令」を受けたとして,本件配転命令の無効確認と,Y1社が一部支払いを拒否している賃金,賞与を請求するとともに,Y1社と,一連の処遇を主導したY2個人に対して,労働契約上の配慮義務違反ないし不法行為による慰謝料を請求した事案である。
なお,本件に先立つ賃金仮払仮処分請求事件では,職務の変更を伴う「スペシャル・アサインメント」は配転命令と評価できるところ,業務の必要性が高くない1方で,Xに著しい不利益を与え,転職を促す目的でなされたものであって,権利濫用に当たり無効とされた。また,「本件配転命令」についても,企業の組織再編のための降格的配転において対象者が相当の不利益を被る場合には,対象者選択に一定の合理性を要するとして,命令権濫用であったとされている。