出向社員に対し、出向先社員の不正行為に関して出向元の監督者懲戒処分規定を適用ないし準用することが | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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出向社員に対し、出向先社員の不正行為に関して出向元の監督者懲戒処分規定を適用ないし準用することが許されるとしても、出向元の企業秩序に及ぼす影響が間接的なものにとどまることは解雇の有効性を検討するうえで考慮されなければならないとされた例

 

東京地方裁判所判決/平成9年(ワ)第18373号

平成11年12月17日

地位確認等請求事件

【判示事項】    1 就業規則の監督者懲戒処分規定は、社員が不正事故等を起こして企業秩序を乱した場合に、その者に対し懲戒処分を科するのとあわせて監督者に対しても懲戒処分を科することにより、企業秩序の維持を図る趣旨で設けられたものであるとされた例

2 出向社員に対し、出向先社員の不正行為に関して出向元の監督者懲戒処分規定を適用ないし準用することが許されるとしても、出向元の企業秩序に及ぼす影響が間接的なものにとどまることは解雇の有効性を検討するうえで考慮されなければならないとされた例

3 出向先の取締役に就任した労働者の業務は、出向元との関係では、出向元に対する労務の提供として行われたものであり、労働者は出向元に対し労働契約の本旨に従い誠実に取締役としての業務を行う義務を負っていたものであるとされた例

4 就業規則の解釈・適用、不正事故の程度、原告の注意義務違反が重大なものではなく具体的な損害が発生したとはいえないこと、他の者に対する処分との比較でも原告の処分は極めて重いことから、原告に対する諭旨解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することはできないとされた例

5 解雇無効による賃金支払いにつき、不明金調査中に導入された新賃金制度を原告に適用することに合理性はなく、制度適用前の賃金が支払われるべきものとされた例

          6 将来の賃金請求が認容された例

【掲載誌】     労働判例778号28頁

          労働経済判例速報1756号3頁