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労働基準法38条の2が定める事業場外労働のみなし制度が適用されるためには,例えば,使用者が通常合理的に期待できる方法をつくすこともせずに,労働時間を把握・算定できないと認識するだけでは足りず,具体的事情(当該業務の内容・性質,使用者の具体的な指揮命令の程度,労働者の裁量の程度等)において,社会通念上,労働時間を算定しがたい場合であるといえることを要するというべきであるとされた例

 

東京地方裁判所判決/平成20年(ワ)第14042号、平成20年(ワ)第26963号

平成22年9月29日

残業代金等請求(甲事件)、残業代等請求事件(乙事件)

【判示事項】    1 労働基準法38条の2が定める事業場外労働のみなし制度が適用されるためには,例えば,使用者が通常合理的に期待できる方法をつくすこともせずに,労働時間を把握・算定できないと認識するだけでは足りず,具体的事情(当該業務の内容・性質,使用者の具体的な指揮命令の程度,労働者の裁量の程度等)において,社会通念上,労働時間を算定しがたい場合であるといえることを要するというべきであるとされた例

2 労働基準法は,使用者が個々の労働者とみなし労働時間を合意することは本来想定しておらず(実際,みなし労働時間が適切に定められなければ,実労働時間の一部に対する賃金支払いを不当に免れさせることになりかねない),それが可能であるとしても,労働者の真摯な合意によるものであること(例えば,労働者自身が当該業務内容を理解し,予測される「通常必要な労働時間」を認識認容したうえで同意するような場合があげられる)を要するというべきであるとされた例

3 裁判所による「業務の遂行に通常必要とされる時間」の検討は,本件みなし制度が適用されるものの,労働基準法38条の2第2項ただし書に定める労使協定が存在しないなどの事情により,みなし労働時間の算定に争いが生じた場合において,訴訟に顕われた一切の資料を総合考慮して,裁判所が,業務の「遂行に通常必要とされる時間」を相当と考える方法によって,判定(評価)する作業であるとされた例

4 労働基準法35条1項にいう「休日」とは,当該労働契約において労働義務がない日とされている日をいうものと解されるから,使用者が労働基準法35条1項を遵守しているかどうかは,特段の事情がないかぎり,当該労働契約の契約期間に含まれている「週」について,少なくとも1回の休日を与えているかどうかによって判断すべきとされた例

5 添乗員として派遣された登録型派遣社員であるXらに対して,労働基準法38条の2が定める事業場外労働のみなし制の適用があるとされ,添乗業務の遂行に通常必要とされる時間として,Xらの従事した添乗業務ごとにみなし労働時間を算出するとの手法の下,Xらの割増賃金・付加金等の請求が認容された例

【掲載誌】     労働判例1015号5頁

          労働経済判例速報2089号3頁