出向(在籍出向)においては、出向者と出向元会社との間の労働契約は維持されているものの、労務提供の相手方が変わり、労働条件や生活関係等に不利益が生じる可能性があるので、出向を命じるためには、これらの点の配慮を要し、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠が必要であるとされた例
福岡高等裁判所判決/平成8年(ネ)第554号
平成12年2月16日
職務命令無効確認請求事件
【判示事項】 1 出向(在籍出向)においては、出向者と出向元会社との間の労働契約は維持されているものの、労務提供の相手方が変わり、労働条件や生活関係等に不利益が生じる可能性があるので、出向を命じるためには、これらの点の配慮を要し、当該労働者の承諾その他これを法律上正当づける特段の根拠が必要であるとされた例
2 会社に、就業規則、社外勤務協定、労働協約等の出向規定に基づき、協力会社への業務委託に伴う出向の必要性があり、出向者に労働条件や生活環境の上で権利の不利益がなく、適切な人選が行われるなど合理的な方法で行われる限り、出向者の個別具体的な同意がなくとも従業員に対し出向を命ずることができる「特段の根拠」があると認めるのが相当された例
3 出向延長措置には、出向の延長を不可避とする特段の事情や余人をもって容易に替えがたいといった高度の必要性を要求することは相当ではなく、「業務上の必要性」があることで足りるとされた例
4 出向者に対する3回にわたる出向延長措置は、社外勤務協定に基づくものであり、業務上の必要性が存し、労働組合との交渉の経緯、数次の延長によって被る出向者の不利益の程度や人選の合理性等を総合して判断すると、権利の濫用には当たらず、有効とされた例
【掲載誌】 労働判例784号73頁