従業員が飲食店で行われた会社の管理者としての経営知識の修得等を目的とする会合に出席して帰宅する途中の事故を通勤災害と認めた事例
仙台地方裁判所判決/平成7年(行ウ)第3号
平成9年2月25日
遺族年金等不支給処分取消請求事件
【判示事項】 従業員が飲食店で行われた会社の管理者としての経営知識の修得等を目的とする会合に出席して帰宅する途中の事故を通勤災害と認めた事例
【参照条文】 労働者災害補償保険法7-1
労働者災害補償保険法7-2
労働者災害補償保険法7-3
【掲載誌】 判例タイムズ953号169頁
判例時報1606号145頁
労働判例714号35頁
【解説】
一 Aは飲食店で行われた、会社の管理者としての経営知識の修得等を目的とする管理者会と呼ばれる会合に出席した後、自転車で帰宅する途中、転倒して死亡した。
本件は、Aの妻であるXが、Aの死亡事故は労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)上の通勤災害に該当するとして、Y(労働基準監督署長)に対して遺族年金及び葬祭給付の各支給請求をしたところ、Yは、Aの死亡事故は通勤災害に当たらないとして右遺族年金等を支給しない旨の決定をしたため、Xが右決定の取消しを求めた事案である。
二 労災保険法7条1項2号、2項、3項を総合すると、同法上の通勤災害と認められるためには以下の各要件を満たす必要があると言える。
(1)「住居」と「就業の場所」との間を往復する行為であること (2)「就業に関し」行われる往復行為であること (3)「合理的な経路及び方法」により行われる往復行為であること (4)往復行為において「合理的な経路の逸脱又は往復行為の中断」のないこと (5)「業務の性質を有する」往復行為でないこと(これが肯定される場合にはむしろ業務災害となる。) 本件ではAが、管理者会に参加した帰路に事故に遭ったため、主として、右記(2)の「就業に関し」の要件が問題となり、したがって、管理者会の業務性が争われるとともに、管理者会が途中からアルコールを含む飲食物等の提供された懇親会に移行していることから、この懇親会との関係でも(2)の要件を満たしているといえるのかどうかが問題となった。
三 本判決は、問題となっている管理者会は、東北本社の実質的下部組織である経営推進会の更なる実質的下部組織であると認定し、管理者会は東北本社の実質的支配下にあったと評価できるとして、管理者会の活動は東北本社の業務であり、事故当日の管理者会も、少なくとも懇親会に移行するまでは東北本社の業務であると認定した。
また、懇親会に移行した後についても、懇親会への参加によって業務と帰宅行為との関連性が失われていない場合には、帰宅途中における事故は労災保険法上の通勤災害に該当すると解した上で、懇親会移行後も主として日常の業務に関することが話し合われたこと、懇親会の時間が約55分間に過ぎないこと、懇親会で出された飲食物は簡単な料理とアルコールが少量に過ぎないこと、懇親会の費用が1人当たり2000円に過ぎないこと等を考慮すれば、右懇親会移行前の業務と右懇親会終了後の帰宅行為との間との関連性は失われていないと解した。
したがって、Aが死亡した事故を通勤災害と認め、Yの決定を取り消した。