東京高等裁判所判決/昭和49年(ネ)第2651号
昭和50年9月8日
損害賠償請求控訴事件
【判示事項】 所有権移転登記申請手続きを受託した司法書士の注意義務に欠けるところがないとされた事例
【参照条文】 民法656
民法644
司法書士法1
司法書士法9
【掲載誌】 東京高等裁判所判決時報民事26巻9号164頁
判例タイムズ335号216頁
【解説】
X(原告、控訴人)は、昭和44年10月13日Y(被告、被控訴人)に対し、本件山林についてのAからXへの所有権移転登記申請を委託したところ、Yはこれに先だつ同月2日本件山林についてAからBへの所有権移転登記申請の委託を受けてすでに登記申請をなし、第3者であるBへの所有権移転登記が経由されていたので、AからXへの所有権移転登記が不可能となって損害を被つた。
そこで、XはYを相手として、まず、第1次的に、YとAとが共謀して、本件山林がすでにBに移転ずみで、Xにその所有権を移転することが不可能であるのに、殊更これ秘匿し、Aの所有であるように欺いたと主張し、第2次的には、司法書士の職務にあるYとしては、Xより本件山林についての登記申請を受託した以上、登記関係を調査し、これがすでにBへの所有権移転登記が経由されていることが判明したときは、Xに連絡し、Xをして相当な善後措置を講ぜしめるべき委任契約上の注意義務があるのにこれを怠つたと主張し、Xの被つた損害の賠償を求めた。
本判決は、まず、Xが主張するがごとき詐欺的行為が認められないとして第1次的主張を排斥したうえ、第2次的主張について、仮に、YがXから登記申請を受託された本件山林についてすでにAからBへの所有権移転登記が経由されていることを知つたとしても、不動産登記申請手続を適式に処理することを要請されたにすぎず、またみだりに他人の権利関係に関与すべきでない司法書士としては、かかる登記関係等を依頼者たるXに告知し、あるいは善後措置について助言するなどの介入的行動に出なかつたとしても、司法書士としての注意義務に欠けるところはないとして、これを排斥したものである。