東京高等裁判所判決/平成13年(行ケ)第454号
平成14年6月7日
空気清浄機事件
審決取消請求事件[空気清浄機事件]
【判示事項】 不当景品類及び不当表示防止法第4条第1号所定の「著しく」の意義及び判断方法
【参照条文】 不当景品類及び不当表示防止法4
【掲載誌】 判例タイムズ1099号88頁
1 事案の概要
本件は、株式会社A(以下「A」という。)が製造販売している「******CR」等と称するイオン式の家庭用空気清浄機(以下「本件空気清浄機」という。)の販売を行うため、平成10年1月から同年10月までの間に配布した店頭配布用パンフレット及び同年1月30日付け毎日新聞に掲載した広告(以下「本件広告」という。)において、本件空気清浄機につき、「******は電子の力で花粉を強力に捕集するだけでなく、ダニの死骸・カビの胞子・ウイルスなどにも有効な頼もしい味方です。」、「有害微粒子を集塵」、「フィルター式では集塵が難しい微細なウイルスやバクテリア、カビの胞子、ダニの死骸の砕片までもホコリと1緒に捕集します。」、「●適用範囲/最大14畳まで」等と記載したことにつき、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)第4条第1号違反が問擬された事案である。
被告のA保全管理人に対する排除命令(以下「本件排除命令」という。)に対して審判手続開始請求があったので、審判手続が開始され、原告は、〈1〉本件広告は不当表示に該当しない、〈2〉本件審判手続に至る手続等が違法であると主張して争ったが、審判審決(以下「本件審決」という。)は、以下のとおり判断した。争点〈1〉について、本件広告は、本件空気清浄機がフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有していることを表示したものであるが、実際にはそのような性能を有するものではないのであるから、本件広告の表示は、Aと競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示であり、また、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示であるとした。争点〈2〉について、本件審判の対象は排除命令に係る行為の存否であり、本件排除命令及びこれに先立つ手続の瑕疵の存否をその対象とすべき余地はない上、原告の主張する違法は存在しないとした。
原告は、本件審決を不服として、東京高等裁判所に審決取消訴訟を提起した。
2 争点及び裁判所の判断
原告は、本件審決について、上記争点〈1〉との関係で、(1)本件広告の表示の解釈の誤り、(2)本件空気清浄機の性能等に関する認定についての実質的証拠の欠缺、(3)審判手続における空気清浄の性能に関する鑑定の申出(以下「本件鑑定の申出」という。)を却下したことの違憲、違法及び(4)景表法第4条第1号の「著しく」の解釈適用の誤りを主張し、また、上記争点〈2〉との関係で、(5)本件排除命令と併せて行われた警告(以下「本件警告」という。)についての判断の欠缺(景表法八条1項違反)及び(6)本件排除命令及び本件警告について行政手続法第12ないし第14条違反を主張した。
これに対し、本判決は、原告の主張をいずれも排斥して原告の請求を棄却した。すなわち、(1)本件広告の表示は、本件空気清浄機が他のフィルター式空気清浄機よりも集塵能力が高く、また、室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有していることを表示したものであるとした本件審決の認定判断は正当であるとした。そして、(2)本件空気清浄機が、フィルター式空気清浄機よりも集塵能力が劣り、また、室内の空中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有するものではないとの本件審決の認定は、実質的証拠を備えた合理的なものというべきであるとした。(3)一般に事業者が広告により商品の性能・効果を標ぼうする場合には、事業者においてその根拠となる実験結果等を有していることが期待され、事業者は審判に際し自己に最も有利な実験結果等を提出するものと考えられるところ、既に取り調べられた被審人に有利な証拠によっても(2)記載の認定は覆らないから、審判官において、本件鑑定の申出を採用しても上記認定を覆すべき結果が出るとは考えられないとして、これを却下したことは合理的な判断というべきであるとした。(4)景表法第4条第1号にいう「著しく」とは、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていることを指しているものであり、誇張・誇大が社会一般に許容される程度を超えているものであるかどうかは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることは通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たるとした上、当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかは、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容などにより判断されると解した。そして、本件広告の表示は、上記(1)の記載の能力を有していると一般消費者に誤認される表示であり、一般消費者において、上記(2)記載の事実を知っていれば、通常は本件空気清浄機の取引に誘引されることはないであろうと認められるから、本件広告の表示は、「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たるとした。なお、(5)、(6)については、おおむね本件審決の争点〈2〉についての判断と同様の内容を判示している。