殺人等被告事件において,当該事案は従前の量刑幅よりも重い量刑をもって臨むのが相当であるとの判断を示した上で被告人を懲役17年に処した原判決の量刑判断につき、控訴審で量刑不当として争われた事例
東京高等裁判所判決/平成22年(う)第756号
平成22年6月29日
殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
【判示事項】 殺人等被告事件において,当該事案は従前の量刑幅よりも重い量刑をもって臨むのが相当であるとの判断を示した上で被告人を懲役17年に処した原判決の量刑判断につき,量刑判断過程における同種事例の量刑傾向の意義や裁判員制度の趣旨を踏まえ,具体的な量刑事情を詳細に検討し,従来の量刑傾向から極端に外れるものではなく,その量刑事情に照らすと不当であるとはいえないとして是認した事例
【参照条文】 刑事訴訟法381
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律1
【掲載誌】 東京高等裁判所判決時報刑事61巻1~12号140頁
判例タイムズ1387号380頁
【解説】
1 事案の概要等
本判決は,居住するアパートの隣家の女性(被害者)との間で野良猫の餌付けなどに関してトラブルを抱えていた被告人が,被害者を牛刀で2回突き刺して殺害し,その際正当な理由なく牛刀を携帯した,という殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件の控訴審判決である。
原審段階から犯罪事実に争いはなく,主要な争点は量刑であった。原判決は,従来のこの種事案についての量刑幅は,この種犯罪の結果・行為の評価としては不十分であり,本件については従来の量刑幅よりも重い量刑をもって臨むのが相当であるなどと述べた上で,被告人を懲役17年に処したところ,これに対して被告人が控訴したものである。