東日本大震災の津波被害を受けた地域の裁判員候補者を裁判員等選任手続期日に呼び出さない措置を採るこ | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東日本大震災の津波被害を受けた地域の裁判員候補者を裁判員等選任手続期日に呼び出さない措置を採ることの可否

 

仙台高等裁判所判決/平成23年(う)第217号

平成24年9月13日

殺人被告事件

【判示事項】    東日本大震災の津波被害を受けた地域の裁判員候補者を裁判員等選任手続期日に呼び出さない措置を採ることの可否

【判決要旨】  天災等の例外的な事情により甚大な被害を受けた一定の地域に居住する者について,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」という。)27条1項の裁判員等選任手続期日に裁判員候補者として呼び出すことが明らかに無益といえる事由が存したり,あるいは,多くの者において,辞退事由である,自己又は第三者に身体上,精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由がある(同法16条8号,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律16条8号に規定するやむを得ない事由を定める政令6号)などとして,辞退を申し出たりする高い蓋然性が存することを,合理的に推認できる場合には,過料の制裁を伴う出頭の法的義務を生じさせる呼出しの措置を採ることは,無益であったり,窮境にある者に更なる過重な負担を負わせたりするものというべきであるから,一律に呼び出さないとする措置を採ることを,同項は許容していると解するのが相当であって,平成23年3月11日に発生した未曾有の東日本大震災に伴う津波により,多数の死傷者や行方不明者が出た上,住宅,店舗及び公共施設等が倒壊流出するとともに,いわゆるライフラインも途絶するなど,甚大な被害を受けて,多数の住民が職等を失い,避難所暮らしや転居等を余儀なくされるなど,物心両面において多大な辛苦を被った地域の居住者につき,同項ただし書各号に該当しないにもかかわらず,同項の裁判員等選任手続期日に呼び出さない措置を採ることとして,呼出状を送達しなかった原審訴訟手続には,法律に従って判決裁判所を構成しなかったとの刑事訴訟法377条1号に該当する違法はない。

【参照条文】    刑事訴訟法377

          裁判員の参加する刑事裁判に関する法律27

【掲載誌】     高等裁判所刑事裁判速報集平成24年275頁