株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
最高裁判所第3小法廷判決/平成20年(受)第1207号
平成21年2月17日
株主権確認等,株主名簿名義書換等,株式保有確認等請求事件
【判示事項】 株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意が有効とされた事例
【判決要旨】 いわゆる持株会が採用した株式譲渡ルールに従い,株式会社の従業員が持株会から譲り受けた株式を個人的理由により売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意は,次の(1)~(4)などの判示の事情の下では,会社法107条及び127条の規定に反するものではなく,公序良俗にも反せず,有効である。
(1) 上記株式譲渡ルールは,日刊新聞の発行を目的とし,日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると規定して,株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に,これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものである。
(2) 非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく,上記株式譲渡ルールにおいては,従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていた。
(3) 当該従業員は,上記株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けた。
(4) 当該会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情はない。
【参照条文】 会社法107
会社法127
民法90
日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律1
【掲載誌】 最高裁判所裁判集民事230号117頁