警備機器のリース料に警備料が含まれるとして信義則上、その部分に相当するリース料相当損害金の請求を許さなかった事例
福岡高等裁判所判決/平成2年(ネ)第444号
平成4年1月21日
リース料請求控訴事件
【判示事項】 警備機器のリース料に警備料が含まれるとして信義則上、その部分に相当するリース料相当損害金の請求を許さなかった事例
【参照条文】 割賦販売法30の4
【掲載誌】 判例タイムズ799号199頁
本件は、顧客(控訴人)が信販会社(被控訴人)から警備機器のリースを受けていたにもかかわらず、同機器を利用して警備を行っていた訴外警備会社が倒産したため警備(役務)を受けられなくなったので、リース料の支払を止めたところ、信販会社からリース料不払を理由にリース契約を解除し、残リース料相当の損害金の支払いを請求されたものである。
割賦購入斡旋にかかる指定商品の売買契約については、役務の提供が指定商品の販売の条件になっているときは割賦販売法30条の4第1項の規定が適用され、役務の不履行も売買契約上の事由として抗弁となり得ると解されているところから、本件についても同条項の類推適用が問題となる。
しかし、本件の場合は法形式が異なる上(因みに最3小判平2・2・20判タ731号91頁は、前記割賦販売法改正前の割賦購入斡旋についても、売買契約上の抗弁を当然には斡旋業者に対抗できないとしている。)、顧客が信販会社との間で、瑕疵担保免責や中途解約禁止の特約をしており、明文上は役務の不履行を理由にリース契約を解除する余地はないこと、本件警備機器が割賦販売法施行令別表第1に定める指定商品に該当しないことなどを考慮すると、警備会社による警備の不履行によりリース物件の使用価値が実現できなくなったとしても、割賦販売法30条の4第1項の類推適用は難しいものと思われる。
しかしながら、リース契約においてはリース料がリース物件の使用価値に見合うか検討した上で契約することが常であり、本件の場合はリース物件の売主でもある警備会社が警備業務を履行してはじめてリース物件の使用価値が実現できる特殊な性質のものであり、このような場合、借主は警備料とリース料を含めた全体としての警備費用については検討するとしても、個別に検討することは通常期待できない場合が多いであろう。
本件警備機器の適正価格をもとにした場合、取付工事費、金利及び保険料利益などの加算要因を考慮したとしても、本件リース料金の総額95万3216円は、当時の訴外警備会社が購入した価額に比して4倍強と異常に高額に設定しており、本件リース料には警備料の一部が入っていることが窺える。
このように訴外会社は警備保障契約上の債務履行の対価の大部分をリース料に計上することによって、容易に警備料相当額を前借りする一方、顧客と信販会社との法律関係は警備保障契約とは別個の法律関係であり、警備保障契約上の事由をもって対抗することはできないことから、控訴人は大部分の警備料を含む残リース料相当損害金の支払を余儀なくされる結果となる。
被控訴人は訴外会社にリース契約の受付等の事務を代行させて自らの営業の拡大を図っているものであるが、本来はリース物件の価額の設定は自らなすべきものであり、右の結果になることは認識していたか、認識し得たものと思われる。
本判決は以上の諸点を考慮し、信販会社の請求する本件残リース料相当の損害金のうち、通常の購入価額ないし、リース対象商品から算定される適正なリース料に相当する損害金を超える部分の請求については信義則に反し許されないとした。