東京地判平成21年10月15日労判999号54頁[医療法人財団健和会事件]
1 被告Y経営の本件病院健康管理室に事務総合職として採用された原告Xが、事務能力欠如を理由として試用期間中に解雇された件につき、Xの精神疾患発症と業務との相当因果関係は認められず、Xの休業は業務上の疾病の療養のための休業には当たらないから、本件解雇は、労災休業期間およびその後30日間の解雇を制限した本件就業規則17条および労基法19条には違反しないとされた例
2 Yは試用期間3か月間のうち20日間程度を残して本件解雇をしているところ、残りの試用期間を勤務することによって、XがYの要求する常勤事務職員の水準に達する可能性もあったのであって、Yは解雇すべき時期の選択を誤ったものといえ、本件解雇は、試用期間中の本採用拒否として客観的に合理的な理由を有し社会通念上相当であるとまでは認められず、無効であるとされた例
3 Xの労働契約上の地位確認請求および本件解雇後の賃金請求が認容された例
4 Xの上司Aは、単純ミスを繰り返すXに対して、時には厳しい指摘・指導や物言いをしたことがうかがわれるが、それは生命・健康を預かる職場の管理職が医療現場において当然になすべき業務上の指示の範囲内にとどまるものであり、その他の発言等も違法なパワハラ・いじめ・退職強要とはいえず、また本件解雇が不法行為を構成するほどの違法性を有するとは認められないとして、Yの安全配慮義務違反および不法行為の成立を否定し、Xの損害賠償請求が棄却された例