人事考課に基づく処遇と不法行為の成否 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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静岡地方裁判所判決平成9年6月20日

『平成9年重要判例解説』労働法事件

ヤマト運輸事件

損害賠償請求事件

【判示事項】 一 使用者が一般的に労働者に対して、他の労働者との均衡に配慮して処遇すべき雇用契約上の義務を負っているとは解されないとされた例

二 使用者の人事考課に伴う裁量が、その許された範囲を逸脱したり、裁量権を濫用したとき、債務不履行責任を負うものではないとされた例

三 賃金処遇制度上、個々の労働者に対して一定の条件が整えば従前より良い条件のもとに待遇すること、あるいは、一定の条件を失わない限り従前より悪い条件のもとに待遇されることがないことを具体的に期待させる取扱いを続けていたような場合に、他に特段の理由もなく、特定の労働者をその期待に反して遇することがあれば、不法行為になり得るとされた例

四 原告がその所属組合の組合員であり、その重要な役職を歴任していることを理由として、被告会社が正当な人事考課を怠り、四級から五級への原告の昇格の期待を無にしただけでなく、格差が生ずるままに放置したものであるとして、不法行為に基づく損害賠償の責任を負うべきであるとされた例

五 原告の損害額は、被告が不当にも適正な人事考課を怠り、これにより当初から原告が他の候補者と並んで競争する地位を奪ったことに対する精神的損害の賠償に止まり、それ以上に予定された賃金額との差額の支払いを求めることはできないとされた例

【掲載誌】  労働判例721号37頁