会社分割に伴う労働契約の承継と5条協議違反―エイボン・プロダクツ事件 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東京地方裁判所判決平成29年3月28日

エイボン・プロダクツ事件

『平成29年重要判例解説』労働法7事件

地位確認等請求事件

【判示事項】 1 会社分割に伴う労働契約承継法(以下,「承継法」)は,会社分割による労働契約の承継のいかんが労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものであることから,分割会社が,承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議(5条協議)(平成12年商法等改正法附則5条1項が規定する協議)を行うこととし,労働者の希望等をも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって,労働者の保護を図ろうとする趣旨に出たものと解されるところ,このような5条協議の趣旨からすると,承継法3条は適正に5条協議が行われて当該労働者の保護が図られていることを当然の前提とするものといえるとされた例

2 承継法3条によれば,5条協議がまったく行われなかった場合,または,会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため承継法が同協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,労働者は労働契約承継の効力を争うことができるとされた例

3 原告Xは,被告Y社から本件会社分割の目的や,それによる労働条件の変更が特段ない旨を他の従業員と一緒に大まかに説明されてはいたものの,XとB工場長の個別の話合いにおいては,リストラを示唆される中で,労働組合を脱退することと引替えに労働契約の承継を選択するよう迫られたにすぎず,その話合いは労働契約の承継に関する希望聴取とは程遠く,承継法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとされた例

4 承継に関する同意があるならば,承継にかかる協議の内容や存在を重視する必要はないとするY社の主張は,5条協議の内容およびプロセスを重視し,他方で,承継の有効要件として労働者の同意まで求めるものではない承継法の趣旨目的を蔑ろにするもので,失当というほかないとされた例

5 XはY社に対して,Y社を退職し,在職中に知り得たY社の機密事項を保持する旨の文書を提出しているものの,これは退職の意思表示というよりも秘密保持を誓約する内容のものであり,また,X・Y社間の労働契約が承継されるものとして取り扱われていた状況下でY社を「退職」するとの言い回しが用いられていたとしても,それが「退社」という事実上の意味を超えてX・Y社間の労働契約を将来に向けて合意解約するというような法的意味合いを持って用いられたものとはいえないとされた例

6 本件の経過や本訴の請求が消滅時効にかかるものでもないことに鑑みると,本訴の提起自体が信義則に反する訴権の行使に当たるとはいえないとされた例

7 Y社はXに対し,労働契約に基づき,Xがオアスを解雇された日以降の賃金支払義務を負い,また,Y社の賞与規定やXがY社に勤務していた当時の賞与の支給状況を踏まえれば,原則,賞与を支給する旨の合意がX・Y社間の労働契約の内容を成しているものと解するのが相当であるとして,Y社は上記解雇日以降の賞与についても支払義務を負うとされた例

【掲載誌】  労働判例1164号71頁