大阪高判平成14年7月25日
相続税更正請求棄却通知処分取消請求控訴事件
『租税判例百選 第6版』106事件
【判示事項】 相続財産を構成する不動産について第三者による時効取得を認容した判決が相続開始後に言い渡されたことを理由とする更正請求に対してされた更正すべき理由がない旨の通知処分が適法であるとされた事例
【判決要旨】 (1) 国税通則法23条2項において、同項各号所定の事由が生じた場合には更正の請求期間の延長を認めているのは、納税申告時には予想し得なかった事由が後発的に発生し、これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更が生じ税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に過酷な結果が生じる場合があると考えられることから、例外的に、一定の場合に更正の請求を認めることによって、保護されるべき納税者の救済の途を拡充したものである。
(2) 国税通則法23条2項1号にいう「判決」とは、申告に係る課税標準又は税額等の計算の基礎となった事実(例えば契約の成否、相続による財産取得の有無、特定の債権債務を発生させる行政処分の効力の有無等)を訴えの対象とする民事事件の判決をいうものと解するのが相当であり、これに該当する例としては、不動産の売買があったことに基づき譲渡所得の申告をしたところ、後日になって、売買の無効確認訴訟を提起され、判決によって売買がなかったことが確定した場合のように、申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実関係について私人間に紛争を生じ、判決によってこれと異なる事実が明らかにされた場合などであって、申告時には予想し得なかった事態その他やむを得ない事由がその後において生じたことにより、その申告の課税標準等の計算の基礎となった事実に関する訴えに係る判決によって、事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときであると解することができる。
(3) 裁判例及び確立した課税実務の取扱い上、時効により不動産を取得、喪失した場合に、私法上の時効の遡及効にかかわらず、租税法上、時効の援用の時に所得が発生し、あるいは損失が生じるものと解されており、本件のように占有者に時効取得されたことにより権利者が所有権を喪失する場合においても、これらの取扱いと整合的に解釈すべきであり、そうでなければ、二重課税又は二重に控除を認めるなどの不都合な結果が生じるおそれがある。
(4)~(6) 省略
【参照条文】 国税通則法23-2
民法144
民法145
民法162-1
【掲載誌】 訟務月報49巻5号1617頁
判例タイムズ1106号97頁
税務訴訟資料252号順号9167