取引参加者契約に基づき東京証券取引所が証券会社に対して負う義務の内容 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東京高等裁判所判決平成25年7月24日

損害賠償請求控訴,同附帯控訴,原状回復を命じる裁判の申立事件

みずほ証券誤発注事件

一審判決は『平成23年重要判例解説』商法8事件

【判示事項】 1 取引参加者契約に基づき東京証券取引所が証券会社に対して負う債務の内容

2 取引参加者契約の免責規定における重過失の主張立証責任

3 重過失の意義

4 売買システムの不具合により取消注文ができなかった場合における重過失の有無

5 東京証券取引所の株式売買停止義務違反による不法行為の成否

6 東京証券取引所に著しい株式売買停止義務違反(重過失)を認めた事例

7 証券会社による株式誤発注と過失相殺

【判決要旨】 1 取引参加者契約に基づき東京証券取引所は取引参加者である証券会社に対し、取引参加者が入力した注文につき取消処理を含み適切に対応することができるコンピュータ・システム(売買システム)を提供する債務を負う。

2 取引参加者契約に「故意・重過失が認められる場合を除き賠償する責めに任じない」という免責規定がある場合には、証券会社は、東京証券取引所に「重過失があること」の評価根拠事実につき主張・立証し、これに対し、東京証券取引所は、「重過失があること」の評価障害事実につき主張・立証し、最終的に東京証券取引所に重過失があるとの評価を導くことが証券会社の責任となる。

3 重過失とは注意義務違反の程度が顕著である場合をいい、著しい注意義務違反というためには、結果の予見が可能であり、かつ、容易であること、結果の回避が可能であり、かつ、容易であることが要件となる。

4 売買システムの不具合の原因がコンピュータプログラムのバグにあった場合において、システム稼働後5年間以上にわたり、類似の不具合を生じることがなく、複数の条件が重なることにより発生する不具合であり、当事者双方が提出する専門家の意見が相反しており、バグの作込みの回避、バグの発見・修正が容易であったと認めることができないときは、東京証券取引所に重過失があるとはいえない。

5 東京証券取引所は、証券市場および株式売買の管理者として公益および投資者保護のため売買停止の権限のみならず、売買停止義務を負っており、売買停止義務に違反して第三者に損害を与えた場合には、不法行為を構成する。

6 東京証券取引所が、特定の株式売買の状況につき約定株式数が発行済株式数の3倍を超えた時点で市場における円滑な流通を阻害する異常があることを認識した場合には、その時点において売買停止義務を負っていたにもかかわらず、裁量の範囲を逸脱した著しい注意義務違反(重過失)があったとされた事例。

7 証券会社従業員が、株式売り注文において株数と株価を取り違えて「61万円で1株」を「1円で61万株」と誤り、警告表示を無視して誤発注したこと、証券会社に発行済株式数を基準とした発注制限がなく、警告表示がされた際、他の従業員が注文内容を確認するなどダブルチェック体制を採用していなかったことなどの発注管理体制の著しい不備は過失相殺事由であり、損害の公平な分担という観点から、証券会社につき少なくとも30パーセントの過失相殺をするのが相当であるとされた事例。

【参照条文】 民法415

       民法709

       民法722-2

       証券取引法(平成18年法律第65号による改正前のもの)108

       東京証券取引所業務規程29

【掲載誌】  判例タイムズ1394号93頁

       金融・商事判例1422号20頁

       判例時報2198号27頁

       金融法務事情1987号136頁