大阪高判昭和62年9月29日
差押処分取消請求控訴事件
【判示事項】 1、相続税申告書の内容となっている取得財産の評価に錯誤があり、右申告が無効であるといえるためには、右錯誤が客観的に明白かつ重大であって、国税通則法等に定める是正方法以外にその是正を許さないと納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情があることを要し、この場合における財産評価の錯誤の明白性とは、評価額が適正に算定された場合の評価額と相違していることが、客観的にみて容易に判断し得ることを指すものと解するのが相当であるとした事例
2、相続財産における株式は相続前3箇月間の株価の変動を基礎としてその評価をする旨を定めた国税庁の相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付直資56、直審(資)17国税庁長官通達169)に基づいて相続株式を評価し、これに従って相続税を算定して相続税申告及び修正申告をしたところ、その後株価が暴落し、実質上無価値となった場合につき、当時の経済状況に照らし、右株式の価額が下落する可能性があったとしても、申告時点における評価額が、その時点における株式評価として適正でないものと容易に判断し得たとまではいえないから、右各申告が、錯誤により当然無効であるとすることはできないとされた事例
3、株式を相続した後、経済事情の変動により株価が暴落し、右株式がほとんど無価値となった場合であっても、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律4条を準用ないし類推適用することは許されないものと解すべきであるとした事例
4、相続財産の主要部分を占める株式が納税者の責めに帰し得ない事情によって無価値となったため、相続人が自己の固有財産を処分して相続税を納付しなければならない事態に追い込まれたとしても、暴落前の株式評価額に基づく課税額をそのまま維持して徴収金を保持したことが違法であり、これにより公法上の不当利得が成立するものと解することはできないとした事例
【掲載誌】 行政事件裁判例集38巻8~9号1038頁
【評釈論文】 自治研究65巻5号127頁
ジュリスト929号114頁
税務弘報36巻4号159頁
上告審である最3小判平成元年6月6日税務訴訟資料173号1頁
上告棄却