教育法の1つである地方教育行政法に関する最高裁・高裁の裁判例を網羅しています。
地方教育行政法の正式名称は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律である。
目次
第1部 学力テスト事件
第1章 北海道旭川学テ事件
第2章 大阪学テ事件
第3章 学力テスト反対行動を理由とする中学校教員に対する停職処分を有効とした原判決が維持された例
第4章 福岡学テ判決
第5章 いっせい学力調査の適否
第6章 いっせい学力調査の妨害行為につき、違法阻却事由の主張を排斥した事例
第2部 国歌斉唱職務命令事件
第3部 給与
第1章 1日校長事件
第2章 1 民間教育研究団体への研修名目により派遣した教諭への違法な給与支出という財務会計上の行為を対象とする県知事等に対する監査請求がされていても、違法な研修名目による教諭派遣に関与したことを理由とする、監査請求の対象者に含まれていなかった県教育委員会委員長を相手方とする損害賠償請求権の不行使という怠る事実に関しては、いまだ監査請求を経たものとはいえないとして、地方自治法242条の2第1項4号本文の損害賠償を求める請求(住民訴訟)が却下された事例
2 民間教育研究団体への研修名目による教諭派遣及び派遣した教諭への給与支出がいずれも違法とされた事例
3 民間教育研究団体へ研修名目により派遣した教諭への違法な給与支出について、県知事に指揮監督上の義務違反を認めることができないとされた事例
第4部 教育長と教育公務員の退職願およびその撤回の意思表示の受領権限
第5部 行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力に反する内容の退職手当支給制限処分
第1章 1 前訴確定判決の認定に反する事実を前提として退職手当の支給制限の割合のみを変更した再度の退職手当支給制限処分が、行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力に違反する処分に当たるとして、取り消された事例
2 行政事件訴訟法33条1項所定の拘束力に反する内容の退職手当支給制限処分がされたことにより、平穏な法律生活を享受する法的利益を違法に侵害されたとして、慰謝料等35万円の損害賠償請求が認められた事例
第6部 研修命令
第1章 1、町教育委員会は地教行法43条1項、45条1項により公立中学校教員に対し勤務場所及び勤務内容の変更を伴う研修命令を発する権限があるか(積極)
2、校長を助け校務を整理する教頭としての職務をほとんど行わなかった教員に対する「教育公務員の職務と責任の遂行のための研究と修養」を目的とした研修命令が違法でないとされた事例
第7部 勤務評定
第1章 1、勤務成績の評定に関する県教育委員会規則およびその委任により教育長の定めた勤務評定書の様式ならびにこれに基づき市町村教育委員会が校長あてに発した勤務成績の評定をなすべき旨の職務命令がいずれも無効であるとして、右職務命令により生ずべき右規則および様式による勤務成績の評定をなすべき義務の不存在確認を求める訴訟において、県教育委員会は当事者能力を有するか
2、勤務成績の評定に関する県教育委員会規則およびその委任により教育長の定めた勤務評定書の様式に基づいて、市町村教育委員会が校長あて発した勤務成績の評定をなすべき旨の職務命令の無効確認訴訟において、県教育委員会は被告適格を有するか
第2章 公立学校職員の勤務成績の評定に関する規則(勤評規則)および勤務評定実施規定(実施要領)によって定められた勤務評定制度ならびにこれに基づいて行なわれる勤務成績の評定は、地方公務員法第46条による措置要求の対象となるか
第3章 勤評長野方式における自己評定義務の不存在確認の訴の適否
第8部 公立学校の教員に対する転任処分
第1章 1、公立学校の教員に対する転任処分が不利益処分に当たるか否かの判定基準
2、公立学校の教員が転任処分により家族との別居を余儀なくさせられる等の事情があるとしても、これをもって右転任処分が不利益処分に当たるとはいえないとした事例
第2章 児童、同僚に暴力を用い、児童の交友関係を公表し、学校の教育方針に反する教育をする小学校教員に対する転任処分が正当とされた事例
第3章 1 地方公務員である教員の転任は、任命権者の自由な裁量に属し、転任の必要性、合理性の観点からみて裁量権の濫用又は逸脱があった場合に初めて転任が違法となると解するのが相当である
2 市立幼稚園長(係長級)を市立郷土資料館主幹補(係長級)に補する転任処分を適法、有効と認めた事例
第9部 地方公務員法による条件付採用職員の解職処分
第1章 1、地方公務員法による条件付採用期間の満了と当該職員の正式採用
2、地方公務員法による条件付採用職員が、解職処分後再び条件付採用職員として採用せられ所定の条件付採用期間の満了により正式採用となった場合における当該解職処分の取消しを訴求する利益の有無
3、地方公務員法による条件付採用職員の解職処分は、行政訴訟に対象となるか
4、所属学校長よりの勤務評定書不提出を理由とする条件付採用期間中の公立学校教員に対する解職処分が違法として取り消された事例
第10部 懲戒処分
第1章 教育長専決
第2章 市町村教育委員会が地方教育行政の組織及び運営に関する法律38条1項の内申をしない場合と都道府県教育委員会の任命権の行使
第3章 1 校長によるクラス担任解除命令により教諭としての地位や権利関係につき何らの変更も生じるものではないから右命令の取消請求を却下した原判決が維持された例
2 最終的には研修命令に従い、すでに右研修を履修し終わっている以上、右研修命令の取消請求は訴えの利益を欠くとして、右請求を却下した原判決が維持された例
3 右研修命令、担任解除命令に従わず、授業を混乱させたこと等を理由とする、小学校教諭に対する停職3カ月の懲戒処分を有効とした原判決が維持された例
第4章 1、校長着任拒否闘争を理由とする懲戒処分につき、組合役員以外の者への免職、停職が無効とされた事例
2、県立高校の校長の任命権限は地教行法34条、教育公務員特例法13条により県教委にあるから、校長の任命を高教組の推薦若しくは承認のある者に限定する慣行があっても、右慣行には拘束力はない
3、公務員の勤務条件法定主義は地方公務員の争議行為の禁止理由となるか(消極)
第5章 1 県立高校の定時制課程を分離独立させ、生徒全員を新設する高校に移籍させた措置に違法性がないとされた事例
2 県立高校に着任した校長・教頭を排斥し、執務を阻害した教職員に対する停職等の懲戒処分に裁量権の逸脱がないとされた事例
第11部 生徒に対する原級留置処分
第1章 高等学校長がした生徒に対する原級留置処分が抗告訴訟の対象となるとされた事例
第12部 公の施設
第1章 公立学校の学校施設の目的外使用の許可、呉市立中学校事件
第2章 市教職員組合である原告Xが、市教委・各学校長に対し、教研集会の会場として小学校施設の使用申請をしたところ、同校長が不許可処分としたことから、被告Y(大阪市)に対し、本件不許可処分の無効確認及び国賠法に基づく損害賠償を求めた事案。(呼称は、原審表示による)原審は、無効確認部分を却下し、国賠請求を一部認容したため、Yが控訴した。(控訴審判の対象は、国賠請求に対する原判決の当否)控訴審は、本件不許可処分は、裁量権行使の判断要素の選択に合理性を欠き、社会通念に照らし著しく妥当性を欠き、違法であるとしたが、適法に成立した本条例に従う義務があった校長の行為に、国賠法上の過失を認めることはできない等として、原判決のY敗訴部分を取消し、同部分に係るX請求を棄却した事例
第3章 高教組の学校施設の使用許可申請に対する校長の不許可処分は違法とはいえないとして、高教組の国家賠償請求が棄却された事例
第4章 市教育委員会が中学校の校庭等の用途に供している土地の用途廃止決定をすることが違法な財産の管理であるとして、地方自治法242条の2第1項1号に基づき提起された当該用途廃止決定の差止請求の訴えが、当該用途廃止決定は住民訴訟の対象となる財務会計上の行為に当たらないとして、却下された事例
第5章 土地の持分に対し賃借権の設定登記を受けた者が、すでに右土地に対し賃借権の設定を受けていた地方公共団体において、その設置かつ管理する高等学校の校庭として使用していた場合に、実力をもって校庭にアパート建築現場と墨書した立札を掲げ、幅6間長さ約20間の範囲で2箇所にわたり地中に杭を打込み板付けをして、もって保健体育の授業その他生徒の課外活動に支障を生ぜしめたときは、器物損壊罪を構成する。
第13部 文書提出命令事件
第1章 県教育委員会が、県費負担教職員の任免その他の進退について判定をする際に、参考資料として市教育委員会が作成した内申書〔地方教育行政の組織及び運営に関する法律38条1項〕は、内部的文書であるから、民訴法312条3号後段文書に当たらないとされた事例