我妻栄=豊島隆『鉱業法』 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

我妻栄=豊島隆『鉱業法』
有斐閣、法律学全集
平成6年、復刻版第2刷(昭和41年初版)
鉱業法に関する本である。
著者の我妻博士は民法の権威、故・豊島氏は元・公社理事である。
出版社の説明によると「民法学者と実務家との見事な協力によって成るものである。判例及び実際の取扱例を豊富にとり入れて鉱業法のあらゆる問題を解説する。」
経済法(産業法) > 鉱業・資源エネルギー
「鉱業」の対象となるものとして、
1 金属鉱物
2 石炭
3 石油、天然ガス
4 原子力燃料
などである。
上記書籍を読み終えました。
第1章 総論
・鉱物資源と鉱業権
■鉱物資源の役割
 資源に乏しい我が国にとって、産業や国民生活に不可欠な基礎素材である希少鉱物(レアメタル)や石炭、天然ガス、石灰石などの鉱物資源を安定的に供給することは、国民経済上、極めて重要な課題です。

 既に閉鎖されているものも多いですが、例えば、北海道では夕張の炭鉱、九州においては、筑豊、三池等の炭鉱が20世紀の我が国経済を支えたことはご承知のとおりです。

 今日においても、金鉱、石灰石、けい石や可燃性天然ガスなどの鉱物の鉱山が、有用な鉱物資源の供給を通して社会貢献を続けています。

■鉱業法
 鉱業法は、こうした有用な鉱物資源を地域社会との調和を図りつつ合理的に開発するために、昭和25年に制定されました。

 鉱業法では、土地所有権から独立した権利として「鉱業権」を設け、願い出に基づく国の設定行為により、鉱業権を賦与することとしています。
つまり、土地所有者といえども鉱業権によらないで法定鉱物を掘採し、取得することは禁止されています。

 なお、国内資源を適正に維持・管理し、適切な主体による合理的な資源開発を行うために、平成24年1月21日に改正鉱業法が施行されました。

鉱業法の平成24年改正のポイントは、
1.出願者に対する技術的能力等の要件を導入し、鉱業権の許可対象を資源政策の観点から適切な主体に限定することとしました。
2.石油、可燃性天然ガス、海底金属鉱物資源等の重要鉱物を特定鉱物として定め、特定鉱物については先願主義によらず、国が、資源の維持・管理を行い、最も適切な開発主体を審査・選定し、鉱業権を付与する制度を創設しました。
3.鉱物資源の開発に必要な地質構造等の調査のうち、鉱物の掘採を伴わないもので、一定の区域を占有して行う鉱物の探査に対する許可制度を創設しました。


法定鉱物と国民生活上重要な特定鉱物
鉱 物 の 名 称
鉱業法の対象鉱物
法定鉱物(41鉱物)
金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛鉱、すず鉱、アンチモニー鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クローム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ひ鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、りん鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスファルト、可燃性天然ガス、硫黄、石こう、重晶石、明ばん石、ほたる石、石綿、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土、砂鉱

特定鉱物(22鉱物)
・石油、可燃性天然ガス
・海底又その下に存在する熱水鉱床をなす金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、そう鉛鉱、すず鉱、アンチモニー鉱、水銀鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、重晶石
・海底又はその下に存在する堆積鉱床をなす銅鉱、鉛鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱
・アスファルト

※「特定鉱物」について
石油、可燃性天然ガスなどの国民経済上特に重要な鉱物を「特定鉱物」として位置付けています。


第2章 鉱業権
・鉱業権とは
■鉱業権の内容
 鉱業権は、「採掘権」と「試掘権」の二種類からなります。

「採掘権」は、登録を受けた一定の区域(鉱区)において登録を受けた鉱物を掘採し取得するための権利、
「試掘権」は、鉱区において登録を受けた鉱物の賦存状況、品質、稼行の適否を試錐(ボーリング)等の方法で試し掘りをするための権利と整理されます。
なお、試掘権の存続期間は2年(石油、可燃性天然ガスは4年。ただし、法改正前に登録を受けた「石油」は2年)となっています。
つまり鉱業権は、未だ採掘されていない鉱物に対する所有権ではなく、採掘することによって所有権を取得することを内容とする支配権です。

 このほか鉱物の合理的開発を図るため、設定行為に基づき他人の採掘鉱区の一部で、登録の目的となった鉱物を掘採し取得するための権利として「租鉱権」も設けています。

■鉱業権の性質
 鉱業権は、物権とみなされ、不動産に関する規定が準用されます。
また、採掘権については、抵当権、租鉱権の目的となることができますが、質権等その他の権利の目的となることはできません。

 鉱業権は、設定、変更、存続期間の延長、移転、消滅、抵当権の設定及び処分の制限等の全ての場合において、鉱業原簿に登録しなければその効力は生じません。

■鉱業権者の責務
 鉱業権者には、権利の賦与と同時に、種々の責務が課されています。
責務や手続きを怠ると、不利益処分を受けることがあります。

 例示すると、まず、鉱業の実施は、鉱業権者の権利であると同時に国家に対する義務であって権利を独占しこれを活用しない、つまり権利の上に眠ることは許されません。
また、鉱業の実施に当たっては、合理的開発と危害防止のため事業実施計画とも言える「施業案」の遵守が求められます。
さらには、鉱業によって与えた損害については、無過失賠償責任によって公正に賠償すべきこととされています。

■鉱業権と土地所有権
 鉱業権が土地に関する権利とは別個の権利であるとは言え、土地所有権や土地使用権等の土地使用権原に優先するものではありません。
正当な権利の行使である限り、土地所有者等は、鉱業権が設定された鉱区内であっても自由な土地利用が可能です。
一方、鉱業権者は、鉱物の掘採や探査等のために地表を使用するには、当然、当該土地の使用に関する権利を取得しなければなりません。

 さらに、鉱業権は、公共用施設や建物の地表・地下とも50m以内での掘採について制限を受けるなど、もともと公益を保護するとの観点から一定の制限を内在した権利であると言うことができます。

第1節 鉱業権の内容
第2節 鉱業権の性質
第3節 鉱業権の種類
1 試掘権
「鉱物の有無・品質、稼行の適否を調査するためのもので、将来取得するであろう採掘権の準備的行為を内容とする」
2 採掘権
「鉱物の堀採取を内容とするもの」
第4節 鉱業権の主体
共同鉱業権とは、2人以上の者(共同鉱業権者)が一個の鉱業権を共有している場合をいう。
その法的構成として、
1)共同鉱業権者の全員が鉱業権の経営に関与するもの(民法の組合に近い)
2)鉱業経営者が、資金を供与した者を、共同鉱業権者とするもの。
3)資金を有する者が、鉱業権者から鉱業権を提供させて、資金供与者みずからが鉱業経営に関与し、本来の鉱業権者には、採掘した鉱物の価額に応じて一定割合による金銭を支払う形態
上記2)の類型は、経済的にいえば、金銭的な金融(ファイナンス)である。
これに対して、3)の類型は、事業(鉱業)の執行の主体が資金供与者にある点で、2)と異なる。

第5節 鉱業権の客体
鉱業権の客体は、鉱物、鉱区である。
鉱物とは、鉱物学上の鉱物のうち、日本国内にあり、経済的価値があり、鉱物法を適用して、その採掘を国家の保護監督下に置くことを適当とするものだけを対象とする。
鉱物のうち、日本国内にあっても、行政上の監督に置く必要のないもの、国内で全く産出されないもの、または経済的価値のないものは指定されていない。
ただし、例えば、国内でほとんど産出されないウラン、トリウム、天然ガスのようなものでも、経済的価値が高いため、法定鉱物とされている。
鉱物法とその施行令などで指定された鉱物は、「法定鉱物」という。法定鉱物は40種類以上指定されている。
廃鉱とは、いったん採掘された鉱物で、鉱物・石炭などとして区別して選別された結果、廃物として遺棄されたもので、未だ製錬されていないものをいう。
これに対して、一般用語で、廃止閉鎖された石炭などの鉱山を廃鉱山・廃鉱ともいうが、これとは異なる。
鉱滓とは、鉱石を精錬した残り滓をいう。
廃鉱、鉱滓も、いずれも鉱物を含んでいるので、鉱山法の対象である。
鉱区とは、登録を受けた一定の土地の区域であって、鉱業権者が登録鉱物・これと同種の鉱床の中に存在する他の鉱物の堀採を行うことができる区域である。

第3章 鉱業権の成立
 鉱業権は、出願人が、単独または共同で出願し、行政庁の認可、鉱業原簿への登録によって成立する。

 鉱業出願の変更
転願
採掘出願地の増減
鉱種・鉱物の追加出願
出願の取り下げ

鉱業出願について不許可となる事由
・出願地が既存の他人の鉱区と重複する場合
・出願地が既存の他人の鉱区の妨害となる場合
・鉱区の優先出願
 優先出願とは、出願の受理または発送の年月日の先後により、出願の可否について行政処分(認可、不認可)が決定される。出願または権利が優先するという意味ではない。
・出願地の鉱業の経済的価値などから許可されない場合
・公益的理由による不許可

第4章 鉱業権の変更
鉱区の増減・分割・合併・併合・交換
担保権の設定


第5章 鉱業権の処分
鉱業権の移転や処分は制限される。
 また、斤先堀契約は無効とされる。
斤先堀(きんさきぼり)契約とは、鉱業権を第三者に賃貸し、賃借人をして、鉱業を管理させる契約をいう。
判例は、行政上の認可・監督から逃れる脱法的行為として、斤先堀契約を無効としている。
なお、次に述べる租鉱権は物権的用益権であるが、斤先堀契約は債権契約に過ぎない。


第6章 鉱業権の消滅
 鉱業権の消滅原因として、
・鉱業権の放棄、
・鉱業権の期間満了
・鉱業権の取消
錯誤の許可
公益を害する場合
他人の鉱業を妨害する場合
鉱業権者の義務違反
・鉱業権の収用


第7章 租鉱権
租鉱権とは、目的である鉱区の採掘権者との間の契約によって、他人の採掘権の一部または特定鉱床の上に成立し、租鉱権が設定された範囲において、鉱業権者の鉱業実施上の権能の全部を排除し、鉱物堀採を独占する一種の物権的用益権である。
そして、行政庁の認可によって設定および登録され、移転、処分、変更も認可および登録が必要なことは、鉱業権と同じである。

第8章 鉱業登録

第9章 鉱業の実施

第10章 土地の使用・収益
鉱業権者の土地の使用・収用については、土地収用法の適用を受ける。

第11章 鉱害の損害賠償と復旧
第1節 鉱業法による鉱害賠償
第5款 特殊な制度
1 行政による仲介
2 民事調停法による鉱害調停 
第2節 石炭鉱害復旧制度
1 特別鉱害復旧臨時措置
2 石炭臨時復旧措置


第12章 鉱山保安法
第1節 総説

産業保安規制として、鉱山の安全を目的として、 鉱山保安法が定められている。

<鉱山保安法の目的>

鉱山保安法は、鉱山労働者に対する危害を防止するとともに鉱害を防止し、鉱物資源の合理的開発を図ることを目的としています。

鉱業権者及び鉱山労働者の義務

 鉱山保安法1条の目的として、
1.鉱山における危害の防止・鉱害の防止

2.鉱山労働者の安全

3.鉱山労働者に対する保安教育

4.保安統括者等の選任
等に関し、鉱業権者に各種自主検査及び届出等を、鉱山労働者に対しては、保安に関する必要事項の遵守を義務づけています。

監督機関
鉱山保安法を適正に実施するための行政機関として
経済産業省に「鉱山・火薬類監理官付」、地方支分部局として「産業保安監督部」(全国9か所)を設置しています。
さらに、「鉱務監督官」を配置し、保安の監督上必要があるときは、各鉱山等に立ち入り、検査を行うことができることとするほか、鉱山保安法違反について、刑事訴訟法の規定による司法警察員として職務を行うことが鉱山保安法で定められています。
このほか、経済産業省及び産業保安監督部に、鉱山保安に関する重要事項を調査審議するため「鉱山保安協議会」が、鉱山保安に関する技術指針等に関する事項を調査審議するため、「鉱山保安制度審査分科会」が設置されています。

第2節 鉱山保安の実施

鉱山保安にかかわる鉱業権者側の者として、鉱業権者、鉱山労働者、保安技術職員など挙げられる。
なお、行政側の官庁・組織・職員については、前述したとおりである。


第13章 鉱業に関する争訟
 旧法についての記述のため、省略する。
 行政争訟法の一般法として、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、特別法として土地収用法の適用がある。

第14章 罰則
 鉱業関係の主な罰則として、以下のものがある。
鉱業法
鉱山保安法
核原子炉等規制法

第15章 鉱業に関する税
鉱業に関する税法として、現在は、地方公共団体の税源として、地方税法に規定されている。
鉱業税は、鉱区税、鉱産税に分けられる。
鉱区税(鉱区の面積が課税標準)は、都道府県普通税である。
鉱産税(堀採された鉱物の価格が課税標準である)は、市町村普通税である。