商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為
最高裁昭和56・10・13、『商標・意匠・不正競争判例百選』108事件、マクドナルド事件
商標権者が登録商標に類似する標章を使用する行為は、旧不正競争防止法6条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」に該当しない。
判決文によれば以下のとおりである。
商標権は、指定商品について当該登録商標を独占的に使用することができることをその内容とするものであり、指定商品について当該登録商標に類似する標章を排他的に使用する権能までを含むものではなく、ただ、商標権者には右のような類似する標章を使用する者に対し商標権を侵害するものとしてその使用の禁止を求めること等が認められるにすぎないから(商標法25条、36条、37条参照)、本件登録商標と類似する本件標章を上告人らが使用することは旧不正競争防止法6条にいう「商標法ニ依リ権利ノ行使ト認メラルル行為」には該当しないものと解すべきである。
(注)商標権の専用権は登録商標と指定商品・役務について同一商標を使用する場合である(商標法25条)。
商標権者が第三者の登録商標と指定商品・役務について、同一・類似の商標を用いることは禁止でき(商標法37条)、差止請求できる(商標法36条)が、積極的に商標権者が使用できるものではない。
仮に商標権者が登録商標と類似商標を使用した場合には、不正使用取消審判の対象となり得る(商標法51条)。
(参照条文)
旧不正競争防止法1条1項1号,旧不正競争防止法6条,
商標法25条,商標法36条,商標法37条
(商標権の効力)
第25条 商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(差止請求権)
第36条 商標権者・専用使用権者は、自己の商標権・専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者・専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
(侵害とみなす行為)
第37条 次に掲げる行為は、当該商標権・専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品・指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品・指定役務に類似する商品・役務についての登録商標・これに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品・指定役務に類似する商品であって、その商品・その商品の包装に登録商標・これに類似する商標を付したものを譲渡・引渡し・輸出のために所持する行為
三 指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標・これに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四 指定役務又は指定役務・指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標・これに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡・引渡しのために所持し、輸入する行為
五 指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標・これに類似する商標の使用をするために登録商標・これに類似する商標を表示する物を所持する行為
六 指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標・これに類似する商標の使用をさせるために登録商標・これに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡・引渡しのために所持する行為
七 指定商品・指定役務又はこれらに類似する商品・役務について登録商標・これに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標・これに類似する商標を表示する物を製造し、輸入する行為
八 登録商標・これに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、輸入する行為