第10 遺留分 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

役に立つ裁判例の紹介、法律の本の書評です。弁護士経験32年。第二東京弁護士会所属21770

10 遺留分

1 遺留分の意義・機能

 遺留分とは、被相続人の一定の近親者に留保された相続財産の一定の割合であり、被相続人の処分によって奪うことのできないものをいいます。

 本来、被相続人には自らの財産を自由に処分する権利があります。しかし、相続制度は、遺族の生活保障および潜在的持分の清算という機能を有しているとされます。

 そこで、被相続人の財産処分の自由と相続人の生活保障との調和の観点から設けられた制度が遺留分制度です。


2 遺留分算定の基礎となる財産

 被相続人が相続開始時において有していた全財産にその贈与した財産の価格を加えた合計の金額から、債務の全額を控除して算定されます(民法1029条)。

遺留分算定の基礎となる財産=「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」+「贈与した財産の価額」-「債務」


贈与は相続開始前1年以内のものが加算されます(民法1030条前段)。これは、贈与契約の時点が基準になります。したがって、1年以上前に締結された贈与は、相続開始前1年以内に履行されたとしても、加算されません。

 相続開始前1年以内でなくても、遺留分権利者への損害を知って贈与した場合には、加算されます(民法1030条後段)。

 共同相続人への特別受益とされる場合は、1年以上前の贈与もすべて加算されます(民法1044条・903条)。

 不相当な対価でなされた有償行為は、当事者双方が遺留分権者に損害を加えることを知ってしたものについては、贈与とみなされます(民法1039条)。

 遺留分算定の基礎となる財産の評価時期は、相続開始時点です(最判昭和51318民集302111頁)。過去の贈与は、受贈者の行為によって滅失したり価格の増減があったりしても、原状のままであるものとみなして、相続開始時を基準に評価されます(民法1044条・904条)。

 債権の場合、額面額ではなく、担保の有無、債務者の資力等を考慮した履行可能性を検討して、その価格を定めるべきとされます(大判大71225民録242429頁)。

3 遺留分権者と遺留分の割合

 遺留分権者は、兄弟姉妹を除く法定相続人、すなわち、配偶者、子、直系尊属になります(民法1028条)。子の代襲相続人も、子と同じ遺留分を持ちます(民法1044条・88723項)。

 遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは13、その他の場合は12になります(民法1028条)。遺留分を有する者が数人いる場合には、相続財産の12あるいは13のうち、相続分に対応する部分が遺留分になります(民法1044条・900条、901条)。

【遺留分】

相続人

配偶者

直系卑属

直系尊属

単独相続の場合

12

12

13

配偶者と共同相続した場合

14

14

16

【事例】において、遺留分算定の基礎となる財産を2億円とした場合、妻乙の遺留分額は、2億円×12×125000万円となり、長男丙および次男丁の遺留分額は、2億円×12×142500万円となります。

4 遺留分減殺請求権

 遺留分減殺請求権とは、遺留分権利者となる相続人が、その遺留分を保全するのに必要な限度まで被相続人の贈与または遺贈の効果を消滅させる旨の請求をすることのできる権利をいいます。

遺留分侵害の財産処分は当然に無効となるわけではなく、遺留分権利者は遺留分減殺請求をすることにより、遺留分の侵害額を取り戻す必要があります。減殺請求の相手方は、減殺対象たる処分行為により直接に利益を得た受遺者・受贈者、その包括承継人ならびに悪意の特定承継人です(民法10401項但書、最判昭和5734民集363241頁)。

5 遺留分減殺請求の対象

 減殺請求の対象は、以下のものです。

(ⅰ)遺贈(民法1031条)

(ⅱ)相続開始前1年前までの贈与(民法1031条)

(ⅲ)当事者双方が遺留分権者を害することを知ってなした贈与(民法1031条)

(ⅳ)特別受益としての贈与(最判平成10324民集522433頁)

(ⅴ)不相当な対価による有償行為で当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたもの(民法1039条)

(ⅵ)「相続させる」旨の遺言(最判平成3419民集454277頁)


6 遺留分減殺請求の順序

 減殺請求の対象が複数あるときには、まず遺贈、次いで贈与がなされ(民法1033条)、贈与が複数あるときは、新しい贈与から順に減殺されます(民法1035条)。ここでいう新旧関係は、契約締結の先後により決せられると解されています。

 遺贈は、目的物の価額に応じて減殺するのが原則です(民法1034条本文)が、遺言者は遺言で別段の意思表示をすることができ(民法1034条但書)、その場合は、その順序に従います。

なお、裁判例(東京高判平成1238高裁民集53193頁)は、死因贈与は、通常の生前贈与よりも遺贈に近い贈与として、遺贈に次いで生前贈与より先に滅殺の対象とすべきものと解するのが相当であり、特定の遺産を「相続させる」旨の遺言による相続は、遺贈と同様に解するのが相当であるとしています。

遺贈・「相続させる」旨遺言 ⇒ 死因贈与 ⇒ 最新の生前贈与


【遺留分減殺についての別段の意思表示の遺言文例】

 遺言者は、遺留分の減殺は、先ず長男に相続させる財産からすべきものと定める。