旧商法下では,新株発行無効確認請求事件の原告適格について,株式会社の記名株式の譲渡を受けたとしても,会社に対し株券を呈示して自己への名義書換をすべき旨の請求をしたことがない者は,会社に対し株式の取得を対抗することができない(旧商法206条1項)から,株主として新株発行無効確認の訴えを提起遂行する原告適格を有しないと判示した裁判例がありました(東京地判平成2・2・27金商855号22頁)。
また,会社法の下でも,株式交換契約無効確認請求事件の原告適格について,実質的な株主であっても株主名簿の書換えを行っていなければ,会社法130条1項は対抗要件を定めたものであるから,株主たることを会社に対抗することができず,株主としての原告適格を認めることはできないと判示した裁判例があります(名古屋地一宮支判平成20・3・26金商1297号75頁)
もっとも,名古屋地一宮支判平成20・3・26金商1297号75頁は会社が従前,当該名義書換未了株主を株主として認め,例えば会計帳簿閲覧権などの権利行使を容認してきたなどの特段の事情が認められる場合には,訴訟において会社が名義書換の欠缺を指摘して株主たる地位を争うことが信義則(禁反言)に反して許されないと判断される余地があり得るが,本件ではそのような特段の事情は認められないと判示しました。
なお,株主であることを会社が否認することが信義則に反する特段の事情としては,会社が当該株主に配当をしたり,株主総会の議決権行使を認めたり,株主名簿や会計帳簿の閲覧請求に応じた場合が考えられます(周劍龍・前掲名古屋地一宮支部判決評釈・金商1315号17頁参照)。