昨年10月。
2年生の星陵祭から早1ヶ月、私たちは次なる演目決めを行った。
「大賞狙うならミュージカル」
それが、ここ2年間の歴代優勝演目から導き出される明白な勝利への方程式だった。
持ち寄られた候補演目は3つ。
2つがミュージカルだった。
そして、残りの1つがこの「風を継ぐ者」だった。
・・・いよいよ投票。
結果は・・・。
「風を継ぐ者」が最多数。
この時33Rの演目は「風を継ぐ者」に決まった・・・・・・・・・はずだった。
やはりこんなに物事簡単にはいかないもの。
問題が発生した。
「風を継ぐ者」は江戸は幕末、新撰組の話。
圧倒的に男子キャストが必要だった。
しかし、キャストをやると名乗り出た人が足りなかった。
『この作品を33Rの演目にしたいが、キャストはやりたくない。』
そういう人が大半だったのだ。
そしてこれこそが、唯一にして最大の問題点だった。
「大体、たった一回手を挙げただけでこれから1年間向き合う演目を決めていいはずがない。」
「やっぱり大賞はミュージカルじゃなきゃ獲れない。」
いろいろな意見がぶつかった。
結局、演目の決め直しが決定。
第2回演目決めが行われた。
プレゼンターによる最後の熱弁。
「3年生の星陵祭」に懸ける熱い思いが伝わってきた瞬間だった。
厳正な投票の末、選ばれたのは・・・・・。
「風を継ぐ者」
私たちは自ら困難の待ち受ける道を選び、やり遂げようと決めたのだった。
「風を継ぐ者」
それは、歌や踊りに一切頼らない、まっすぐな作品。
幕末の志士たちは日本を愛する心を持ち、新しい国を作ることを目指して戦った。
これからの未来を背負う私たちは、彼等のおかげで今の日本があることを忘れてはならない。
そして、彼等を伝えなければならない。
そういう想いでこの演目に決めた。
欲しいのは「星陵大賞」じゃない。
私たちの望んだものは、お客さんに「伝える」ことだった。
問題の男子キャストの不足は、女子2人が男子キャストをやることで解消された。
2人の努力があったからこそ、私たちはこの作品をやることができたと言っても過言ではないだろう。
時代劇=殺陣(たて)である。
武士キャストは刀を振り続けた。
キャストの朝練は合唱祭直後から毎日続けられた。
体育祭が終わり、合唱祭が終わり、いよいよ残るは星陵祭のみとなった。
過ぎた今となっては本当にあっという間の出来事だが、その一つ一つを考えてみると、本当にたくさんの出来事があった。
演技をよくしたいがための葛藤。日常茶飯事。
ああしたらいいんじゃないか、こうしたらいいんじゃないか。
何回も意見を交わした。
さて、33Rは学年でも1位2位を争うほど頭の良いクラスである。(当社調べ)
しかしここにまた問題点があった。
33Rの係チーフの半分がキャストであることが物語るように、33Rはキャストメンバーの負担があまりにも大きすぎた。
キャストが演技も作業もしている。
そんな状態が多々あったと思う。
それでも、何の争いもなく乗り越えられたのは、監督かすみのおかげに他ならないと思うのは、私だけだろうか?
あの小さい体で、どれほど多くの仕事を抱え込んで、そしてどれだけ多くの仕事を文句ひとつ言わずにこなしたことだろう?
誰かが言っていた。
「かすみは普段早く寝る人なのに、夜中の1時にメールしてすぐに返信が来たときは驚いた。」
と。
去年のパンフレットに「MVPかすみ」と書いたが、今年も間違いなく彼女がMVPである。
本当に感謝しかない。
何度も言っているけど、まだ足りない。
「ありがとう」
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いよいよ星陵祭1週間前となった。
ここまで来るといったん舞台設置や外装がメインとなった。
さきほども述べたように、大道具チーフ田村君(迅助)を筆頭にキャストは作業にひっぱりだこ。
他のクラスから通し練習の音が聞こえてくる中、33Rはいまだに作業に追われていた。
舞台が完成したのは前日の5時過ぎ。
舞台での通し連、1回。
目をそむけてはならなかった。
これが、現実だった。
が、少なくともキャスト兼星陵祭委員である私にはそこまで焦りは感じられなかった。
それくらい、早くから準備してきた自信があった。
なにしろ他のクラスから合唱祭の練習の歌声が聞こえてくる中、私たちは読み合わせを行っていたのだから。
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迎えた本番当日。
実はこの日、私たちは大きな決断を下した。
脚本を切ったのだった。
前日の通し連、そこでかかった時間は70分だったのだ。
公演間の時間は1日目が30分、2日目が20分。
1公演少しずつでもずれこめば、投票終了にかぶってしまう可能性は大いにあった。
大賞が欲しかったから、ではなく、観に来てくださったお客様の大切な1票を、無駄にしてしまうのが嫌だったから。
全11公演。
私たちは力の限り演じきった。
迅助が走る、兵庫が語る、沖田が戦う、土方が諌める、三鷹が笑いをとる・・・・・。
診療所メンバーも、長州一同も、全力だった。
迎えた最終公演。
迅助が走りきったあと、拍手が出たのが本当に嬉しかった。
「これで最後なんだ。」
と感じないくらい、役に入りきっていた。
最後の明治のシーン。
舞台裏ではかすみが泣き始めていた。
表で最初に泣き始めたのは、どうも兵庫らしい。(笑)
兵庫が迅助に大声で叫ぶ。
「迅助!お前、何してたんだ!?」
迅助は聞き取ることが出来ず、遠くで首をかしげる。
兵庫がもう一度大声で叫ぶ。
「10年間、何してたんだ!!??」
剣作が兵庫に言う。
「聞こえませんねぇ。」
兵庫が笑みをうかべて言う。
「いや、俺には聞こえたぞ。」
剣作が兵庫に聞く。
「なんです!?迅助さんは、なんちゅうたんです!?」
兵庫、最後のセリフ。
「『走り続けてた』って。」
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最終公演が終わって、最初に出た言葉は「ありがとう」だった。
さっき、キャストばかりが頑張った、みたいなことを書いたが、終わってから思う。
そんなことは決してなかった。
最終公演、残り10分で、仲間のために30枚の整理券を完売にしてくれた客引き。
大道具、小道具、衣装、美術、デザイン、広報、CM、メイク、音響・照明・・・・・・・。
仲間のために動いた40人全員で作り上げた作品だった。
だからこそ出た、「ありがとう」だった。
「大賞獲りたいね」でもなく、「つかれたね」でもなく、
「ありがとう」だった。
このクラスで劇ができてよかった。
33Rで、本当によかった。
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33Rはみなさまのご投票のおかげで、3位になることができました。
今まで33Rを支えてくださった皆様、ご来場いただいた皆様には、心からの感謝の気持ちで一杯です。
8クラスすべてご覧になった方の多くが、
「33Rが一番良かった。」
とおっしゃってくださいました。
もし観客のみなさん全員が全クラスの劇を観ていたら、33Rは星陵大賞だったかもしれません。
でも、そんなことはどうだっていいんです。
私たちは、目標であった「伝えること」ができたんですから。
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後輩のみなさん。
私たち2013年度33Rは、3年前の33Rの先輩方がおこした「風」を受け継ぎました。
もし、困難に立ち向かってでもこの作品をやりたい、という覚悟が出来たのなら、私たちは今度は「風を継いだ者」としてみなさんを支えるつもりです。
ですから、何年後でもいい。誰か、私たちの「風」を継いでください。
お願いします。
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全力で「走り続けた」星陵祭までの日々。
このかけがえのない思い出を胸に、私たちは新たなる目標に向かって「走り続け」ます。
みんながいるから頑張れる。
支え合って高め合って、前に進んでいきます。
最後に、皆様の心の中に、いつまでも『33R 風を継ぐ者』がありつづけることを願うばかりです。
本当に、本当にありがとうございました。
33R一同