エレベーターを開けると同時に、目の合う黒服は獲物を、あなたをお金の単位で瞬時に計算します。
彼がいらっしゃいませと頭を下げるのは、客ではなく財布の中の諭吉様です。
深々と頭下げつつ身なりによる誤算の修正を行います。
獲物の金額が判明すると、胸元にある小さなマイクを掴み席回し担当に連絡し、あなたの席には力量に見合ったフロアレディが付くことになるでしょう。
そこで、横に座った子はアルバイトの普段は歯科助手で週に1、2回出勤する子だとしてもあなたは大人の余裕みせ、ヤン車に乗った彼氏のタバコ代とオーディオのローンを払っている女の子だとしてもなく彼女のドリンクを頼みましょう。
そして最初の彼女は彼氏がいる、でも全然構ってくれない、
と
いう人生相談をしてから去って行きます。
さあ、次の彼女がやってきました、
次の子と最初のやり取りは「何軒目なんですか~~~」
と、いう
最初の彼女と同じやり取りから始まります。
でもあたなは屈しません、必死に虚勢を張って今日は散財したアピールをします。
そんなアピールも彼女はあなたのお友達の水割りを作るのに一生懸命でとどいていませんが一生懸命雫のついていないグラスを拭く横顔に癒されることでしょう。
薄暗い店内で、顔を見ると、あどけなさ残る顔にちょっと濃いめのチークにマスカラ、、、
思わず「学生!?」と問いただすあなたに彼女は、、、、
「夜で働きながら学生やってるんですぅ~本当は早くやめたいんですぅ~」
と、恥ずかしそうに微笑みます。
ほろ酔いのあなたは、反対を言えば『学生をやりながら水商売をしているのか』という考えは思いつきません、『彼女は嫌々働きながら頑張ってる学生なんだ!』
頑張り屋の彼女いいなぁー
そう思ったところで黒服の人がやってきます。
そろそろお時間になりますが延長の方いかがでしょうかーーーー!!!
一瞬我に返ったあなたは、友人たちと相談しますが隣の彼女の冷たい視線に気づく前に延長を提案し友人たちも了解します。
気に入った彼女の前で、財布と相談する理性はありません、あなたは彼女ともっと話したい。そう想います。
彼女さん!お呼びです!
あろうことか、延長した瞬間に彼女は呼ばれてしまいます。
「あの野郎ーーーー」
あなたは、黒服に殺意を覚えます。でもここで騒いではいけません、せっかく気に入った彼女に嫌われてしまいますから。ここは彼らの作ったゲームに乗らなければルール違反です。
次に、
イライラしているあなたをよそにお店は爆弾を投下してきます。
よくいえば巨乳、、、、、、
そう、お店は延長したのであれば他のキャストを回さなければキャストさん同士で不平等。
の、大義名分のもとあなたに一時的な補欠要員を付けます。
身の程しらずの補欠要員は、テーブルに着くなりあなたの嫌いなタバコに火をつけ「失礼しまージュポ」と、挨拶もままならい内に自分のペースに巻き込みにかかります。
モクモクしたマルボロメンソールライトの煙になれたころ、彼女はこう語り出すでしょう。
「今日は何軒目なんですか?」
終わります。
山田。